
今回の記事内容のまとめ
- パーマは一般的にアルカリ剤でシスチン結合は切り離し、酸性の薬剤で繋げ直す技術
- パーマが定着するには時間が必要、その間にシャンプーすると落ちてしまう可能性がある
- とはいえ今は薬剤が進歩したから、当日に濡らすのも洗うのも気にしなくていいのでは
こんにちは。
西宮・夙川にある「マンツーマンでお客様の髪のお悩みに真剣にお応えする」がコンセプトの
小さなプライベートサロン【Ricos】の佐久間 将でございます。
「かけたばっかりなんで今日はシャンプーしないでくださいね」
このセリフを聞いたことある人とても多いと思います。
せっかくしたパーマや縮毛矯正が落ちてしまう。取れちゃう。
だからシャンプーしないでね、という話までなら聞いたこともあるはずです。
美容師ならそこまで説明しないとお客様に対して説明責任を果たしてませんからね。
ただ単に「洗うなよ」って言われても「なんで?」がわからないと意味ないと思うんですよ。
今回はそのあたりのことを美容師じゃない一般の方にもわかりやすく説明するつもりです。
伝わってくれたらうれしいな。
本日も拙文をご高覧賜りましてありがとうございます。
それではどうぞ。
原理の説明【パーマはボタンの掛け違え】
「なんでシャンプーしないでねって言われるか」という話をするにあたって必要なこと。
それは『パーマの原理』です。パーマのかかる仕組みですね。
これを知っていただけるかどうかで話の理解度が全く違います。
パーマの原理というと酸化と還元という…理科とか化学の授業の話になってしまうのですが、
そのあたりの基礎的なことがこちらにまとめてありますのでぜひ目を通してみてくださいね。
上記の記事にあるシスチン結合なるものがパーマには大きく関わってきます。
髪の内部には組織が2列並んでいて、それがシスチン結合というものでくっついている。
その結合を切るために還元剤を使い、巻いて形を変えたところで酸化剤を使って再結合させる。
これがパーマの原理のざっくりした説明なのですが…
そんな話されてもよくわかんないですし、そもそもつまんなくて頭に入らないですよね。
なので別の何かに例えてお話をします。
それが本項の見出しにある【パーマはボタンの掛け違え】です。

とりあえずこれを書いてる今着てる自分のシャツで説明しますけども、
このシャツあれですよね。ドンタコスの袋みたいですよね。
一昔前に『あたりまえ体操』が流行ったcowcow多田のスーツが伊勢丹の紙袋みたいな、
「どうも~、伊勢丹の紙袋で~す」とまではいきませんが…配色はドンタコスみたいなシャツ。
このシャツのボタンをシスチン結合だと考えてください。
髪の内部に並ぶ組織がシャツの両側、それを繋いでいるシスチン結合がボタンです。
で、やったことある人ならわかると思いますけど、パーマって薬液を2~3回つけますよね。
最初につける薬液が還元剤です。美容師は1液って呼んでますね。
よく使われるのはアンモニアなどが添加されていてアルカリ性の薬剤になっています。
そんな還元剤の役割、それはボタンを外すことです。

ボタンが外れた状態。前開きのシャツが開きましたね。
この状態がパーマの放置中だと思ってください。
頭の上でぐーるぐーると温める機械が回ってるのを見たことありますよね。あれです。
このとき、毛髪内部のシスチン結合は切断されています。
なのでシャツがボタン外れてべろんって開いたみたいに、髪の中身も動かせます。
これはシャツだからあれですけど、実際のパーマでは髪はロッドに巻かれていますよね。
巻くことで本来留まっていた結合の位置がズレます。
今度はその状態で固めるんです。それが次のお薬。
酸化剤ですね。2液と呼ばれるものです。
酸化剤の役割は外したボタンをまた留めること。

髪がロッドに巻かれていることでシスチン結合は本来留まるべき位置がズレます。
ボタンの掛け違えが起こった結果として、見ての通り服はシワシワになりました。
このシワがパーマです。
だから髪はウェーブしたりくるくるになったりするんですね。
ちなみに縮毛矯正はこの逆です。
逆と言っても手順が逆なのではなくシャツの状態が逆というだけで、ボタンの掛け外しは同じです。
やってることがロッドで巻いてるかアイロンで延ばすかの違い。
だから縮毛矯正はパーマ系のメニューに含まれるんですね。
まとめるとこんな感じになります。
パーマはこちら↓

縮毛矯正はこちら↓

ざっくり言うとこういうことなんですよ。
まぁ…ケミカルに詳しい美容師さんには大変お叱りを受けそうですけど。
でもどうでしょう、お読みの皆様はこの説明わかりやすかったですか?
シャンプーしないでね、をもう少し考えてみる

さて。
原理はわかったところで、なんでシャンプーしちゃいけないのか…の話に移りましょうか。
前項での説明の通り、パーマは還元剤でシスチン結合を切って酸化剤で再結合させて形をつけます。
1液でボタンを外して、2液でボタンを留めるという流れですね。
実はこれ…まだパーマ終わってません。
いや、施術は終わってるんですよ。仕上げてお会計もしてお客様は家にも帰ってますよ。
でもパーマは終わっていないんです。
どういうことかと言いますと、薬液つけただけではパーマは固まりきってないんですよね。
ボタンを留める2液は酸化剤だとさっき書きました。
酸化剤ということは当たり前ですけど酸化させるわけで、薬液には酸素が入っているわけです。
酸素に触れることで髪のボタンが留まるのですが…2液だけでは留まりきらないんですよ。
ボタンが穴にひっかかってるような状態だとイメージしていただけたらいいかなと。
状態として不安定な感じがするの伝わりますよね。
このボタンをきちんと留めるために薬液以外に空気中の酸素と時間が必要になります。
パーマを定着させるために必要な自然酸化の時間は24~48時間。
この間にシャンプーをしてしまうとパーマが落ちたり緩くなってしまう恐れがある…となるわけで、
だから「1~2日はシャンプーしないでくださいねー」って言われるんですよ。
…今ここまで読んで「そうだったのか」と全てが繋がった人いますよね。
コナンとか金田一が真犯人がわかったときみたいな…あの感じ。
そうです。そういうことなんですよ。
で、シャンプーをしてはいけませんよという話。
たぶんこれずっとずーっと昔から言われてると思うんです。
勝手な推測ですけど…おそらく昔のシャンプーって今よりももっと粗悪だったんじゃないのかなと。
カラー剤やパーマ液だって昔より今のほうが良くなってるわけですから。
だとしたらシャンプーもトリートメントも昔より今のほうがいいに決まってるわけで、
ましてやサロン専売品ではない、スーパーやドラッグストアにある市販のシャンプーで昔のもの。
たぶん今の時代から見て比べたらだいぶ粗悪だったと考えるのが自然です。
で、市販品のシャンプーの主な原料になるのがいわゆる高級アルコール系と言われる界面活性剤。
よく見るのは『ラウレス硫酸ナトリウム』『ラウリル硫酸ナトリウム』ですね。
原料が安価で洗浄力が高く泡立ちも良好…という、まさにシャンプーにはもってこいの原材料。
この原材料自体はpH 7.5 - 9.5ぐらいのアルカリ性なようです。
今でこそpH調整剤が入って中性や髪と同じ弱酸性にして消費者のニーズに沿っていると思うのですが、
たぶん昭和ぐらい昔の時代って髪にやさしいとか考えて作ってなかったと思うんですよね。
そのへんで売ってるようなシャンプーがそんなとこまで考えて作られてたわけない。
今だって旅館やホテル備え付けのシャンプー使うとギシギシしたり、よく流さないと気持ち悪いので。
だから推測でしかないですけど、おそらく昔のシャンプーはアルカリ性だったんじゃ?と思うわけで…
還元剤はアンモニアが添加されたアルカリ性が多いとさっき書きました。
アルカリついたらボタン外れるんですよ。
ボタンまだ留まりきってないのにアルカリつけてわしゃわしゃしたらボタン外れますよね。
だから昔はパーマした日にシャンプーしたら本当に緩くなったり落ちたりしたと思うんです。
たぶん今もそう言われてるのはその時代の名残だったりしませんかね。
だってぶっちゃけ今どき当日にシャンプーしたぐらいでパーマ落ちませんよ。
薬剤だってアルカリ性じゃないもの増えましたしね、酸性薬剤の縮毛矯正とか。
1液できちんと結合切れてれば…最初につける薬でボタンがきちんと外せてたら、
施術当日にシャンプーしてもたぶんパーマの類は落ちることないと思いますよ。今の時代ね。
だからクレームにならないように万が一とか念のため言っておきますね、って程度なのかなと。
自分はそう思ってます。そうお客様に伝えてます。
美容師さんから見てこれもし間違ってるよって言うならぜひご指摘くださいね。
みんな気にしすぎなんじゃないの?

というわけで、自分はお客様にも…例えば夏場とか汗かいたとかならシャンプーしていいよって、
そう伝えてます。そのまま寝るほうがお客様的にも絶対に嫌だと思うんでね。
シャンプーでさえ正直そこまで問題ではないと思うので、髪を濡らすなんて全然いいと思うんですよ。
たまにいらっしゃるんですよ。
「当日は髪の毛濡らしちゃいけないんだと思ってましたー」っておっしゃるお客様。
そう言って髪をまとめたり、人によってはそもそもその日はお風呂にも入らなかったりするそうで。
いやいや…だってそれ気持ち悪いでしょ。
そんな神経質にならなくていいんですよ。水は中性ですからね。ボタン外す要素ない。
同様にトリートメントとかコンディショナーの類もつけていいですよってお伝えしています。
そんなあれもこれも制限あったらパーマとか縮毛矯正やりたくなくなるじゃないですか。
なのでそんな気にすることなくお客様にはもっと気軽にパーマ系メニューを楽しんでほしいんです。
それでも美容師としてパーマや縮毛矯正をしたお客様にお願いしたいことがございます。
- 熱いお湯を使わずぬるめのお湯で髪を流すこと
- きちんと乾かすこと
- くしで梳かしたり引っ張ったりしないこと(パーマのみ)
これは守っていただきたいのです。
シャンプーするかどうかより個人的にはこっちのほうがよっぽど大事だと思ってますね。
当店含め美容室ではお客様のご希望を叶えられるよう薬剤も技術もご用意しておりますので、
みなさんもぜひふんわりパーマスタイルやサラサラのストレートヘアを楽しんでいただけたらなと。
私ども美容師はそう思っております。
どうぞお気軽にご相談お問い合わせくださいね。
とりあえず最後に一昔前のドンタコスの袋を載せときます。
さっきのシャツと見比べてみたら配色だいたい一緒だってわかってもらえるかなと。
スナック菓子は湖池屋がマジでいちばんうまいと思うんですよ。
