
今回の記事内容のまとめ
- 美容室側の都合での次回予約は、お客様にとって煩わしいこともある
- 長持ちするスタイルを作ることで「無理に来なくていいですよ」になってほしいスタンス
- Ricosでは嘘をつかない正直な仕事を大切にしている
こんにちは。
西宮・夙川にある「マンツーマンでお客様の髪のお悩みに真剣にお応えする」がコンセプトの
小さなプライベートサロン【Ricos】の佐久間 将でございます。
美容室に行ったとき、帰り際に次回の予約をお勧めされること…ありますよね。
そういったことに積極的なサロンさんも多いと思います。
ですが当店はこちらから強く推すようなことはしておりません。
これにはちゃんとした理由があります。今回はそんなお話。
本日も拙文をご高覧賜りましてありがとうございます。
それではどうぞ。
とあるリフレクソロジーでの出来事

これはもう…何年前かな、15年以上昔のことなんですけどね。
横須賀にある実家の最寄り駅から電車で20分ぐらいのところに上大岡っていう駅があるんですよ。
横浜市港南区ですね。京急と横浜市営地下鉄の乗り換えができる大きめの駅。
そこそこ大きい駅なので、駅の近辺はまあまあ栄えているんです。ほんとに駅の周りだけ。
その駅近くにあるリフレクソロジーのサロンに何回か通っていたことがあります。
確か職場のお客様におすすめされたんだったかな。
リフレクソロジーをざっくりと説明するなら、
「足裏にある反射区を刺激して自身の自然治癒力や新陳代謝を高める健康法」
ということなんだろうと思うんですね。だからまぁ…足マッサージみたいなもんなんでしょうけど、
厳密に足だけっていうんじゃなくて身体とか頭もサロンによっては施術してくれるようです。
で、その上大岡にあったリフレクソロジーがね、めっちゃ気持ちよかったんですよ。
ああいうのって寝ちゃいますよね。
たぶんけっこうぐーぐーといびきかいて寝てる。気持ちいいもんね。
すごくリラックスとリフレッシュができて「あー、すっきりした」って具合にいい気分になって、
お会計も終わって…ってタイミングで次回の予約の話に絶対なるんですよ。
あの当時まだまだ若かったから金に余裕なんて全然なかったのもあるし、
そもそも週1しか休みがない中で頻繁に時間が作れないから『たまにする贅沢』ぐらいの感じで、
自分としては1~2ヶ月に1回気が向いたときに行ければよかったんですよ。
だからそんな先の予定なんてわからないわけで、それを今予約入れろって言われても困るんですよね。
「あー、ちょっと先なんでまだわかんないですね」みたいな感じで断るじゃないですか。
そう言うと「都合悪かったらキャンセルしてもらっても全然いいんでー」とか言われるわけですよ。
それがめんどくせえんだよ。何お前余計な手間増やしてんだよ。
そんな先の予約入れてること自体忘れたらキャンセルも忘れて無断キャンセルみたいになるじゃん。
実際に先すぎて予約入れてたの忘れてすっぽかしたことありますからね。ここのリフレクソロジーで。
それでも次回予約入れてくれといつも帰り際にぐいぐい迫ってくるこのサロン。
せっかく気持ちよかったのに毎回このやり取りが面倒すぎて行くのをやめました。
ぶっちゃけ次回予約のやり取り…超がつくほどうざい。マジでうざかったです。
それ以来一度も行っておりません。技術に不満はないだけに残念でしたね…。
ほんとね、何でもそうですけどぐいぐい迫られると断るのも労力がいるんですよね。
断り方考えるのもしんどいんですよ。
それってあなたの都合ですよね?

とはいえ、かつて自分が勤めていた地元の美容室でも帰り際に次回のおすすめはしてましたよ。
次回予約をゴリ押しするような手口じゃなくて、次回のおすすめ時期を紙に書いて渡すっていう、
そういうライトなやり方でしたね。
これぐらいなら他のサロンさんでもよくやってますよね。
前の職場の社長が言うには「ヘアスタイルには賞味期限ならぬ賞【美】期限がある」とか何とか、
「だからお客様が美しさをキープできるように次回の予約を勧めるのは美容師の責任」みたいな、
なんかそんなようなことを確か年初のミーティングで毎年言ってたような気がします。
それはね、確かにその通りだなって思う面もありますよ。
ここ最近はTwitterなんかを見てるとまさにその美容師の責任ってのを強く前面に打ち出して、
自信をもって次回予約を獲っていく美容師さんやサロンさんが増えたように思います。
あー、今はTwitterって言わないのか。Xか。ややこしい。
まぁそのXを見てると例えば「次回予約率9割超え」みたいな謳い文句のサロンや美容師さんがね、
けっこういらっしゃるわけですよ。お客様から厚い支持があってすごくいいと思うんです。
当店もそれくらい地域の皆様に支持される美容室でありたいと思いますよ。
ただね、ちょっと思ったんですけどさすがに次回予約率が90%を超えるってのは…
これたぶんお客様側が帰り際に次の予約を申し出ての数字だけではないですよね。
さっき書いたリフレクソロジーみたいな感じで次回予約を帰り際に迫ってるんじゃないのかなと。
もちろん本当にお客様から申し出てる可能性もありますけど、だとしても…ね。
10人中9人が次回の予約を自ら申し出て入れて帰るってあんまり自然ではないような気がするんです。
そりゃね、歯医者みたいに治療途中で放置したら大変なことになるなら次回予約もわかりますよ。
美容室も歯医者と同じぐらい重要と思われる仕事をしろと言われたらその通りかもしれませんし、
「それができないお前は自分の仕事に自信がないのか」とのご批判もあるかもしれません。
でも我々に予約表があって予定があるのと同じように、お客様にも何かしら予定があるんですよね。
繰り返しになりますけどそんな先の予定なんてわかんないことがほとんどですよ。
何があるかはわかんないけど、美容室の予約と比べて大事な予定が何かしら出て来る。
それなのに帰り際に「次のご予約入れて行きましょう」なんて言われても…って感じじゃないですか。
美容室でも例えば帰り際に次回予約入れて下さったお客様は次回5%引きとか、
なんかそういうサービスつけて次回予約を促すところもあるらしいですね。
そのサービスで押してぐいぐい来られたことあるって話もお客様から聞きますよ。
「いま予約取って行かないと次回5%引きサービスなくなっちゃいますけどいいですか?」みたいな。
お客様の美しさに責任を持つのが美容師っていうスタンスは全然あっていいですけど、
それを理由にしてそこまで次回予約をゴリゴリに勧めてくるってもはやお客様の為じゃないですよね。
美容師側が、店側がお客様を囲い込んでおきたいだけですよ。そこまで行ったら。
「それって私たち客側じゃなくてあなたたち店側の都合ですよね?」
ややもすると言い方がひろゆきみたいになってしまいかねないのであれですけど…
これだけたくさんの美容室があって、これだけたくさんの美容師がいて。
シビアな潰し合いを日々している中で自分のとこに来たお客様を逃がさず囲い込もうと、
次回予約をきちっと入れていけば翌月以降も店の売り上げが安定して確保できるわけで、
それってやっぱりけっこうな部分がお客様側の都合より店側の都合なんですよ。
例えばなんとなく3ヶ月に1回ペースで美容室行く人は年間の来店回数が4回のところを、
店側が2ヶ月に1回のペースで予約取らせるようにしたら年間来店回数は6回にできる。
それだけで施術2回分の売上が確保できますよね。サロンとしては。
収益事業ですからまずは売り上げを確保して経営を安定させるのはもちろんですし、
使用する薬剤がどうとか、技術的な面とか料金は店の都合とか裁量で決めるべきと思いますけど、
予約に関してはお客様にも予定がある以上こっちの都合でゴリ押しはしないほうがいいと思いますね。
それをお客様の為を思って…みたいな言い方に言い換えるのは何かが違う気がしています。
なんかそういう例をちらほらと見かけますね。ちょっともやっとしてます。
私の言う「お客様は来なくていい」には理由がある
「お客様は別に来ないなら来ないでもいい」
これは自分がここ夙川に美容室を開く前から、他店で美容師をやってた頃からずっと言ってます。
…ものすごく誤解を招く言い方ではありますよ、これ。
お客様に来てほしいかと聞かれたら、そりゃもちろん1人でも多くの方に来ていただきたいですよ。
お客様来なかったら店潰れますからね。
そうじゃなくてこれは自分の仕事のスタンスとか来店サイクルの話なんです。
お客様が美容室に予約を入れるとき、ご本人がもう我慢できない限界の状態で来られる方が多いです。
そこが我慢の限界なんでしょうけど…実際にはその2週間ぐらい前にはもう気になってるんですよ。
「あー、そろそろおさまらなくなってきたなー」「セットが決まらなくなってきたな」って。
だからそろそろ美容室予約入れなきゃなって思うんです。そのときは。
でも「まぁ…もうちょっといけるかな」みたいになるんですよ。
それで我慢して2週間経って「あーやっぱもう無理だわ」ってなって予約入れる…みたいなね。
だいたいそういう方が多いです。これけっこう共感してもらえる話なんですよ。
名付けて【お客様は本当は来店の2週間前に一度限界が来てる説】とでも言っとこうか。
水曜日のダウンタウンみたいな感じの画像作ってくれるジェネレーターあったので作ってみました。
詳しくはこちらから。みなさんもぜひどうぞ。

いや、別にそんな本腰入れて検証する気はないんですけどね。
さて。
昔勤めていた職場に経歴の長い美容師さんがいました。
この美容師さんは人柄も良く、明るくて会話も楽しく、予約もよく埋まっていました。
お店に来られたお客様に毎回カウンセリングで「前回どうでしたかー?」ってよく聞きますよね。
そしたらお客様もだいたいいつも同じように答えるわけですよ。
「切ったばっかはめっちゃよかったんですけど、やっぱり時間経つと扱いにくくなってー」って。
サロンでのよくある会話ですよね。
でもこの美容師さんが抱えるお客様の来店サイクルがだいたい1ヶ月~1ヶ月半なんですよ。
さっき自分が言った『本当は来店の2週間前に一度限界が来てる説』の通りだとするなら、
この美容師が作るヘアスタイルのもち具合って2週間~1ヶ月ですよね。
…ちょっと短くないですかね。普通に考えてスタイルのもち具合悪いですよね。
お客様はマメにご来店されていい状態をキープできて結果オーライ的なのかもしれませんけど、
来店サイクルが短いってお客様にとって本当にいいことなのか…?
自分はそう思ったんですよ。
カラーして根元が伸びてきて黒髪もしくは白髪が目立つ。毛先の色抜けが気になってきた。
縮毛矯正してから時間が経って根元のクセが気になってしょうがない。おさまらない。
あてたパーマがだんだんゆるくなってきた。
こういったように、髪の何かで気になることがあって皆様は美容室に来られるはずです。
だからカットしてから長さが伸びてきてセットが決まらないとか髪がおさまらないとか、
薬剤を使うメニューでなければそういったことが気になる頃に美容室に行こうと思うはずです。
逆に言えばそこが気にならなければ美容室行こうと感じないでしょうし、思わなくていい。
それでいいと思うんですよ。
気にならなかった=それだけそのスタイルが長持ちしたっていうことですから。
【あなたがそれまで通っていた美容室に行かなくなった理由】
以前何かの雑誌かな、誰かがそんなアンケートを集計してました。
これの1位が「なんとなく」だったんですよ。特に理由なし。
これと言って何か不満があったわけじゃないけど、なんとなく行かなくなっちゃった。
当たり前ですよね。
これだけたくさんの美容室があって美容師がいて。それだけたくさんの選択肢があるわけですから。
お客様側からしたらお店もスタイリストも選び放題なわけです。
そりゃちょっとお店変えてみよっかなって思ったりもしますよ。
我々美容師は「なんとなく」で忘れ去られる職業です。
そういう中にあって、スタイルが長持ちして例えばこれまで1ヶ月半ペースで美容室に行ってたのに、
それが3ヶ月ちょい経つまで…これといって気になることがなかったとします。
「そういえば最近美容室行ってないけど最後に行ったのいつだっけ?」みたいな感じで、
スケジュール帳見たりホットペッパーの履歴見たりして確認をする。
「あー、もうこんなに経ってたんだ」っていうぐらいのほうが頻繁に通うよりいいと思うんですよ。
そのほうがスタイル長持ちしてコスパがいいってことになりますからね。
それで美容室に行こうと思ったときに「そういえばこの前行ったとこよかったな」みたいな、
そんな感じで美容室行こうと思ったときになんとなく思い出してもらえる美容師でありたいんです。
なんとなく忘れ去られる職業で、なんとなく思い出してもらえる人でありたい。
それをこっちが「次はいつまでに来なさいよ」なんて時期を区切ってせっつくのは違うよなと。
思い出すタイミングはヘアスタイルが気になってきたタイミングだろうと思うので、
むしろ普段忘れ去られてるぐらいのほうがヘアスタイルに不満なくていいよね、って思うんですよね。
行きたいなって思ったときに行ければいいじゃないですか。
この項で最初に書いた「お客様は別に来ないなら来ないでもいい」という自分の言葉。
それにはここまでに書いてきたような意味を込めているんです。
伝わったらうれしいな。
大切なのは【正直な】仕事

「美容室なんてそんな別に無理して来るもんじゃないですよ」みたいなスタンスで、
これまでずっと…17年ほど美容師の仕事をやって来ました。
熱意ある美容師さんとかには甘いとかぬるいとかお叱りを受けそうではあるのですが、
繰り返しになりますけどもちろんお客様がお越しいただけるのは本当にうれしいんですよ。
これだけ数ある美容室と数いる美容師の中から選んでいただける幸せ。
お客様が喜んでお帰りになる背中を後ろから見送るとき。
次回またご来店くださって「前回すごくよかった」と言ってもらえること。
この仕事をしていて本当に…美容師冥利に尽きると言いますか。率直にうれしいです。
自分があんな変わった考えの美容師であるにもかかわらず選んでお越しくださっている。
当店に通ってくださるお客様は皆様いいセンスをお持ちの素敵なお客様ですよ。
本当にありがとうございます。
当たり前ですけど通ってくださったらうれしいですし、手放したくないですよね。
これは美容師やってたらだいたいみんなそうだろうと思うんですけども、
だからといって店側が囲い込むのは違うんじゃないのかと。そう思うんです。
お客様が他店に行ってしまうのをよく「浮気した」みたいな言い方したりするじゃないですか。
通ってくださっているお客様が他店に行ってしまう。
とても残念なことです。
でもそれを担当美容師が後でどうこう言うのは変ですよね。
そもそも行きたいときに予約が取れなかったっていうお客様側のタイミングもあるでしょうし、
そのときに「他の店でもいいかな」って思われるような仕事してる自分の技量の問題もあるわけで。
世の中これだけ美容室あるんですから、そりゃ違う店試そうってなることだってありますよ。
それを表情に出して嫌そうにする心の狭い美容師もごくまれにいますけど…よくないですよね。
なので当店ではお客様をあれこれ言って囲い込むことはしておりません。
タイミングが合わなかったとか何か物足りなくて他店に行くのは仕方のないことです。
むしろこれはチャンスだと思うようにしています。

仮にもしたまたま行った他店の仕上がりが当店のよりも良かった場合。
お客様はきっとそちらに通うでしょう。
とても残念です。残念ではあるのですが、それは自分に何かが足りなかったからそうなった。
技術なのか、接客なのか、店の環境なのか。何かが至らなかった。
お客様にはより良い店を選ぶ権利があります。
もしこれまで通ってくださっていたお客様がお見えになられなくなったとき。
何かがいけなかったんだろう、何かが物足りなかったんだろう。
それを考えて反省するきっかけをもらえたということです。それを今後の営業に活かしていく。
わりと気にしいなので考え出すと胃が痛くなることもあったりしますけど…それは今はいいとして。
より良い美容室作り、より良い美容師であろうという気付きをもらえたわけです。
特に1人営業してると客観的な視点は失われがちですから。
内容にもよりますけど、率直なお叱りのお言葉と思って受け止める必要がありますね。
逆にそのたまたま行った他店よりも当店のほうが仕上がりが良かった場合。
お客様は「あー、やっぱりいつものところのほうがいいわ」ってなりますよね。
そうなったお客様はこれまでよりも通っていた美容室を大切に思うようになります。
自分に合う美容室をまた一から探すのってものすごく大変ですからね。
こうなると万が一行こうと思ってたタイミングで予約がいっぱいで取れなかったとしても、
よっぽど急ぎの用事でもない限り「他の店でもいいかな」って思われるようなことは減るわけです。
今さら言うまでもなく当たり前のことですけど、そういう仕事がしたいんですよ。
お客様のための仕事って何だろう。
そう考えたときに、普通の美容師なら言ったり考えたりしないようなことを思ったりする。
お客様に必要と思ったらご予約時よりも倍額ぐらいのメニューを勧めることもある一方で、
逆に必要ないと思ったらどんどんメニュー削る提案して半額以下にすることもある。
美容室なんてお客様が行きたいと思ったときに行けばいいじゃないの。
お客様の年間来店回数が少ないならそれはむしろコスパいい仕事ができたから誇らしい。
選ばれなかったら選ばれなかったでそれは仕方ない。自分がきっと何かいけなかった。
そんなこと思う自分はわりと変な人だと思いますよ。
売上至上主義、単価至上主義みたいな狩猟型美容師とは全然違うので。
大切なのはお客様に対して正直であることだと思っています。正直な仕事。
当店に通ってくださるお客様は、多かれ少なかれその部分に共感してくださっているように思います。
そのようなお客様のうちの何人かは当店に何か大きな価値を見つけてくださっていて、
そうなると美容室の予約が歯医者の予約と同じくらい重要なものになるんだろうと思うんです。
店側が次回予約を強く勧めていく必要性ってないんですよね。
自然とお客様側から次回のご予約を申し出たくなるような、価値のある仕事をしていきたい。
そう思って日々美容の仕事をしております。
ちなみに「お客様は別に来ないなら来ないでもいい」とか言ってますけどね、
もちろんお客様に対してカラーのもち具合とか、スタイルをキープする理想のペースとか、
そういったものは主に仕上げの際にご説明しております。
それも何も言わないぐらいに投げやりじゃないですからね。ご安心くださいませ。