こんにちは。

西宮・夙川にある「マンツーマンでお客様の髪のお悩みに真剣にお応えする」がコンセプトの

小さなプライベートサロン【Ricos】の佐久間 将でございます。

学校の授業で社会科が苦手…特に地理とか世界史が苦手という方は多かったと思います。

あんなもんつまんないんですよ。普通の人にとっては。

つまんないんですけども、正直なところ数学や理科以上に社会科は役に立つものです。

社会科とは我々が今生きているこの世界についての背景や知識ですから。

自分は普通の人ではないので社会科をつまんないとは思っていないんですけどね。

昨年のロシアによるウクライナ侵攻以降、この世界はそれまでとは大きく変わってしまいました。

その変化はロシアとウクライナだけに止まらないのです。

ヨーロッパはもちろん、アメリカ、中国、インド、ブラジル、アフリカ諸国、東南アジア…。

もちろん日本も例外ではありません。

大きく動き始めた世界で日本はどこを目指していくのか。どこに進むべきなのか。

いろんな意見があるとは思いますが、自分が注目すべきは『南』だと思っています。

今回は美容師らしからぬ真面目な話がボリュームたっぷりになってしまいました。

本日も拙文をご高覧賜りましてありがとうございます。

それではどうぞ。

「三つの帝国」の時代

もう…15年くらい前ですかね。

本項の見出しに書いた通りの本があったんですよ。

「三つの帝国」の時代。著者はパラグ・カンナっていう…確かインド系アメリカ人だったかな。

その手の研究者にしては若くて優秀だの何だのらしいですよ。よう知らんけど。

世界を率いるスーパーパワーは米中欧であると。アメリカと中国とEUですね。

それらの国がその他たくさんの国にどのような影響を及ぼすかということが主に書かれてたはずです。

今ここね、店にいてこの本が手元にないもんで…家帰ったらあると思うんですけども。

いろんなこと書いてありましたよ。

例えば…我々に身近なところで言うなら中国とその周辺についてですね。

「中国の隣にほぼ人がいない広大な土地があれば、それは中国人に住んでくれと言ってるようなもの」

ってカンナ氏は書いてました。

これについてはこれまでも中国は実際そうしてましたからね。チベットとウイグルとモンゴルで。

で、彼はミャンマーの項でもそれを記述してました。人が少なくて資源があって戦略上重要な位置。

ミャンマーを押さえると中国は陸路でインド洋に面した港に行けますからね。

カンナ氏はあともうひとつ、著書の中で中国の隣にあってほぼ誰も住んでない土地を挙げてました。

 

 

シベリアです。

人だらけの中国の隣にスッカスカのシベリアがあるわけで。

これは中国人に住んでくださいって言ってるようなもんですよね、って話を書いてたわけです。

この本読んでたときは「まぁ…そうかもな」ぐらいにしか思っていなかったのですが、

2023年になってこの話がちょっと現実味を帯びつつあります。

ロシアのウクライナ侵攻がしくじりまくってるからですね。

さくっと侵攻が終わらずに長引いてしまったのでロシアは中国にめっちゃ迷惑をかけまくっています。

いや、迷惑なんてもんじゃねえな。大損害レベルっていう話もあります。

ルーブルの価値を買い支えるために人民元を売っ払いまくってそれを原資にしてるだとか何だとかで、

そのせいで人民元が対ドルで下落して中国の不動産業界がヤバいことになってる説ありますもんね。

それに世の中こんな具合で台湾侵攻なんてリスク高すぎてとてもできない情勢にもなりましたし。

たぶんね、中国の指導部はロシアにガチギレしてる頃だと思うんですよ。

表立って言わないけど「ええ加減にせえこのダボ」という思いを沸々と溜め込んでいる。おそらく。

この『落とし前』をロシアにどうつけさせるべきか。

というところでの極東ロシアへの侵攻ついでにシベリアもぶん捕っていくのはあり得ますよね。

極東ロシア(沿海州)への侵攻は中国的にも失地回復の大義名分が立つからやりやすいらしいので。

日本も来るべき時が来たら千島とサハリンにすぐ手を出せる準備したほうがいいと思いますけどね。

サハリンをまるまる全部中国に持ってかれる前に。

 

 

という形で世界を盤面にした陣取り合戦を主に行えるプレイヤーが現代でも『帝国』なわけです。

日本もかつてはそうでした。列強と呼ばれていた頃は…でもそれも80年ほど前のこと。

現代の日本はプレイヤーのポジションではなくて盤面の駒なのです。

上記リンクの通り、全裸中年男性もそう説いておられましたよね。

そんな駒たちの中でも我々日本についての記述がカンナ氏の著書にはものすごく少ないんですよ。

彼にとって日本はぶっちゃけこれといって書くべきことのない国なんでしょうね。

経済的に30年以上停滞して、特に何も変わることなくだらだらと国力が下がっていく。

2009年当時、世界的に見て日本は話題性に乏しい斜陽国家と見られていたことが伝わってきます。

 

OCUを考えたゲーム会社の先進性

JICAの理事長をやっていらっしゃる偉い先生が西太平洋連合のすすめという本を出してます。

自分まだこの本読んでないので今度買ってみようと思うんですけども。

日本、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋島嶼国などから成る地域共同体

これを作って米中対立に飲まれることなく生き残るべしといった提唱をしている本ですね。

いや…そりゃさ、これが実現出来たら理想的だよな。

っていうか今回自分が言いたいことはまさにそこなわけで、そうあるべきと思ってるんです。

それが簡単にできるわけないほどアジアは多様性に満ちた地域なので難しいんですけども。

…ここまで読んであることに気付いた人、たぶんちょっとだけおられると思います。

上記の太字の部分から成るこの西太平洋連合という共同体構想。

デジャヴ的な既視感を覚えた方が少数おられると思うんです。どこかで見たなと。

 

そうです。フロントミッション。

ゲームですね。スクウェアの…コアなファンの方からしたらジークラフトなんでしょうけど。

知らない皆様にはぜひこちらのウィキペディアの記事を読んでいただけたらと思うのですが、

ざっくり言うとヴァンツァーっていうロボットに乗って戦いながら物語を進めていく…という感じ。

この作品はシリーズになってまして、1st~5thまでの本編の他に外伝的なのがいくつかあります。

その中でも自分がプレイしたことがあるのは『3rd』しかないのですが、

友人はこのシリーズが大好きで1stから持ってましたね。プレイしてるところを後ろから見てました。

このゲームはほぼ全ての作品が一貫した世界設定を基にして展開しています。

ブロック化した近未来の世界におけるいくつかの超大国間の緊張と陰謀がストーリーの基本ですね。

このゲームにおいてメインとなる超大国が2つありまして。

ひとつは南北アメリカ大陸の国家を統合して作られた『ニューコンチネント合衆国(USN)』

もうひとつが本項の見出しにもある『オシアナ共同連合(OCU)』です。

日本とオーストラリアとASEAN(ゲーム中では別の名前)が同列の権利を有する共同体だそうで、

主な加盟国は日本、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋島嶼国という設定。

この項で最初に書いた西太平洋連合と全く同じですよね。

東大と立教大で名誉教授やってる先生が『西太平洋連合のすすめ』を2021年に発売したのに対して、

『フロントミッション1st』の発売が1995年。スーファミの頃ですよ。

米中対立時代に日本が生き残る道として大学教授が提唱した考えが、実は26年も早く公開されている。

しかも大学とかシンクタンクではなくゲーム会社によって。

これだけの大先生がまさかコンセプトをゲームからおパクリ遊ばされることはないでしょうけども、

フロントミッション開発スタッフの先見の明たるや…ですよ。

 

 

地政学の話が出てくるときにいつも自分はOCUとフロントミッションが頭をよぎるんですね。

このゲームシリーズはある程度現実を踏まえて舞台となる国の背景や設定を考えているのですが、

けっこう投げる球がギリギリというか…際どい設定で攻めてリアリティを出してます。

例えば『2nd』ではバングラデシュから改名したアロルデシュという国が舞台でして、

そこでクーデターが起きるところからストーリーが始まるんですけれども…

発売当初バングラデシュ大使館から正式にスクウェアに抗議が来たらしいんですよ。

バングラデシュは独立以来クーデターが相次いでいたので、古傷えぐられてる感あったんでしょうね。

フロントミッション開発スタッフの中にそのへんに超詳しい人がいるのか、

それとも外部のどなたかに設定の考察を依頼しているのかはわかりませんけれども…

なんにせよこのゲームは地政学的観点から見てもだいぶリアルに考えられています。

リアルすぎるほどに。

 

時代が空想に追いつくとき

 

フロントミッションシリーズに出てくるオシアナ共同連合という共同体。

この共同体がそういう名前になったのには設定上でもきちんと理由があるそうです。

上述の通り日本とオーストラリアとASEANが同列の権利を有することから、

ASEANが面しているインド洋と、日豪が浮かぶ西太平洋という2つの大洋(Ocean)を抱く意味で、

"Oceania Cooperative Union" という名称にしたとのこと。

当初のOCUの英語での表記は"Oceana Community Union" だったはずなのですが、

フロントミッションが海外進出するにあたってネイティブから何かツッコミ入ったんでしょうね。

いつの間にかしれっと修正されてました。こっちのほうが自然な表記なんだろうな。

 

さて、お気づきの方もおられると思います。

「2つの海の交わり」から生まれた『自由で開かれたインド太平洋』という概念。

”Free and Open Indo-Pacific Strategy(FOIP)” と英訳されアメリカ政府も公式で使用し、

インドやオーストラリアだけでなくヨーロッパ各国にまで広まったこの用語。

これの提唱者は安倍元首相です。

国内的にはなんともすっきりしない印象の安倍政権ですが、対外的には大成功とでも言うべきで、

これこそが安倍政権最大のレガシーです。他の欠点を補って余りあるほどの。

アメリカが言い出した外交政策に日本が後ろからついて行くのがいつものパターンですが、

FOIPは日本が言い出したものにアメリカが乗ってくるというレアケースなんですよね。

「それって日米関係がドナルド・シンゾーの間柄だったからじゃないの?」

っていう見方もあるでしょうけれども、それだけでこの概念が世界中に広まることはないはずです。

ものすごく理に適っているから広く受け入れられているんだと思います。

オーストラリアのモリソン前首相は「安倍さんは私の先生だった」って言うほどですし。

麻生さんも国会で言ってましたよね。

外国の首脳に会うと「安倍は何と言っている」ってよく聞かれたって。

それはもちろん日本では珍しい長期政権だったからというのもあるとは思いますが、

安倍さんのビジョンは多くの国々で大変大きな価値があったからこそですよね。

そんな安倍政権を引き継いだ岸田政権率いる今の日本の外交方針もそのままこれになっています。

安倍さんフロントミッションやってたのかな。わかんないけど。

 

 

OCUと違ってFOIPはインド洋の向こう側にあるアフリカ東岸の国々も見据えており、

そういった意味では両者は全く同じものではありません。

ですが2つの大洋に面した地域から生まれたオシアナ共同連合という構想が出てから20数年後に、

地域の安定と繁栄のために自由で開かれたインド太平洋戦略が提唱されたというのは、

空想の産物であるゲームに現実世界である今の時代が追いついてしまった感があります。

虚構新聞の記事が現実化してしまって虚構ではなくなってしまうのと似てますね。

もっとも、ゲームの通りOCU創設に至るには日米と米豪の関係が決定的に悪化しなければならず、

ゲーム背景的にはオーストラリアのタンカーをアメリカが拿捕して米豪関係が悪化するのですが、

おそらく現実世界ではアメリカが『世界の警察官』から降りることで実現しそうな気がします。

既にその予兆はありましたからね。

トランプ政権下のアメリカで「他国の防衛にカネがかかりすぎている」などと言って、

駐留国からの撤退もしくは駐留国のさらなる負担増を強く求めていましたから。

対米関係が決定的に悪化する何かしらの事件が起きるのではなく、アメリカが自ら退いていく。

米軍の退いた穴を埋めるために各国が軍備を増強して自主国防の方針を加速させていき、

日比、日越、日豪の防衛協力からやがて集団安全保障に繋がるのではないかと。

これは今のところは自分の妄想の類で終わる話なのですが、もし現実化するのであれば…

それは来年のアメリカ大統領選挙がトランプ再選という形になったときでしょうね。

トランプ再選後のアメリカというのを世界は織り込み済みという話もあるぐらいですので、

そういったことも見据えていく必要があるんだろうと思います。

 

 

あと何だ、シリーズ最新作の『LEFT ALIVE』の舞台はルテニアとガルモーニヤって国なんですけど、

これウクライナが東西に分裂した設定なんですよね。

2127年っていう少し遠い未来の話なんですけれども、世界観が遠い未来の感じが全くしない。

いま現在進行形でウクライナとロシアは戦争してますからね。

画像見る限りだとガルモーニヤの国土はドンバスとクリミアどころかオデーサまで含まれてて、

今の戦争でロシアが完全制圧を目標にしてるエリアと全く同じなんですよね。

ウクライナ東部からモルドバにある沿ドニエストル共和国まで占領して陸の回廊を作るって。

ロシアがウクライナに侵攻する3年前(2019年)に発売されたゲームなのに。

なぜスクウェア・エニックスはロシア軍の最終目標を侵攻の数年前から知ってるんだ的な。

確かに3年前の時点でロシアはもうクリミアをぶん捕ってたし、ドンバスも影響下に置いていた。

沿ドニエストルなんかはモルドバが独立した冷戦終結直後ぐらいからロシア軍がいたはず。

でもオデーサはずっとウクライナなんですよ。

『トランスポーター3』でジェイソン・ステイサムが女を依頼通りに運んで行ったときも、ずっと。

そんなオデーサまで含めた親ロシア派の国家をこの戦争の3年前から想定するってすげえなと。

まさかスクエニとFSBの間に何かしらの繋がりがあるとは到底思えませんけれども。

コルスンスキー駐日大使とかウクライナ本国は『LEFT ALIVE』知らないんだろうな。

知ってたら抗議しそうな内容っぽそうですから。

 

なんにせよ現実が空想に寄って行ってる感がものすごい世界になってしまっているので、

今の自分の願いとしてはガンダムの世界に寄って行かないでほしいということだけですね。

まあね、自分はガンダム全く観たことないからほぼ何も知らないんですけども、

どうやらジオン軍がオデーサに水爆を投下するシーンがあるらしいので。

ガンダムにおいては地球連邦軍がギリギリのところで水爆をぶった斬るらしいのですが、

現実の戦争でそんな神がかり的な奇跡が起こせる保証は何もないのです。

「越えてはいけない一線を越えたら核兵器を実戦で使うぞ」とロシアは世界を脅していますけども、

そのターゲットにオデーサが選ばれないことを祈るのみです。

そんなとこまでフィクションに寄せなくていいんだからな。ロシアわかってるよな、おい。

穀物輸出合意ずっとこじれっぱなしとか、クリミアの海軍基地ぶっ叩かれまくってるとか、

そういう諸々の報復のためにウクライナ随一の港湾都市オデーサに核を落とそうとか考えるなよ。

もう広島と長崎以外に被爆地を作っちゃいけないんだからな。

 

雁行形態論が終わってる今だからこそ

 

かつて『雁行形態論』というものがありました。雁行経済とも言いますかね。

雁が群れを成して飛ぶとき、きれいに「く」の字型に編隊を組んで飛ぶそうです。

いや、この写真は出来過ぎだと思いますよ。フリー素材で拾ってきましたけど。

アジアの経済発展が日本を先頭にして、その後ろをNIEs、その後ろをその他ASEAN諸国が追う、

そう続々とテイクオフしていくのが雁が飛ぶ様に似ていることからそう呼ぶそうで。

確かにこれまではそうでした。

アジアの先進国といえば、それは日本の代名詞のようなもの。

そういう時代が大変長く続いていましたね。

ひいき目に見てバブルが崩壊して「失われた10年」とか言われてた2000年代前半ぐらいまでは。

だから『東アジア共同体』だのアジア諸国で連合を組むだのっていう話が出て来ると、

だいたい「またそんな無茶なことを」っていうトーンで批判がなされるわけです。

あまりにも経済力に差がありすぎて対等な連合とか共同体組めないってのもあるでしょうし、

日本人自身が長らく雁の先頭に立つことを当たり前に感じすぎていることもありますよね。

経済面でのアジアNo.1は日本だと。他のアジア諸国はおしなべて貧乏であると。

今もそういう意識の人まだまだ多いと思うんですよね。

日本国内にいる外国人労働者に対する思いとか意識とかから察するに。

 

でも日本の「失われた10年」が20年になり、それが30年になった今。

アジアにおける雁の編隊は大きく形が崩れました。

我々の後ろにいた雁の中から、我々よりも先に行ったり並んで飛ぶ者が出てきています。

何でしたっけ…沖縄サミットの頃はG7で最も1人あたりGDPが高かった豊かな日本が、

この前の広島サミットのときにはG7で最も1人あたりGDPの低い国になってしまったって。

あれ、確かこれ購買力平価で見た実質GDPでの話でしたっけ。

国としては今もなお日本が世界3位の経済大国なのは事実です。

ただ、この『1人あたりGDP』を見ておかないといけませんよね。

未だに1億2700万の人口がある日本ですから、そりゃ国としての経済規模は大きくなります。

でもこれを購買力平価で見た1人あたり実質GDPで言うならですよ、

今回話題にしているインド太平洋地域に限って言っても我々の前には…

・シンガポール
・マカオ
・ブルネイ
・香港
・台湾
・オーストラリア
・韓国
・ニュージーランド


が飛んでいるわけです。日本は彼らの尾を見て飛んでいる。

我々の後ろにはマレーシアが、その少し後ろにはタイと中国が飛んでいるのが視界に入るわけです。

日本のGDPが伸びずに横ばい…現状維持を続けている間にも世界は成長しているのです。

誰でしたっけね、日本は年率1%人口が減っていくから、年率1%経済が縮んでいってしまう…

だから年率1%成長してようやく横ばいだぞみたいな話してた人。大前研一さんでしたっけ。

なんかよく「もう成長なんかやめよう」「経済の話より人間らしく生きよう」みたいな、

なんかそんな感じの『脱成長』みたいな話が一部でウケたりしてるじゃないですか。

とんでもない話なんですよね。何言ってんだお前っていう。

「みんなでいっしょに貧しくなろうよ」っていう沼に引きずり込もうとしてるに過ぎないんですよ。

脱成長して競争から離れたら平和にのほほんと暮らしていける…わけないんでね。

それで今の生活水準が維持できることはないんですよね。

脱成長に則って生きるなら、自ら生活をダウンサイジングして便利な暮らしを手放す必要がある。

究極的には何らかの形で物資の不足や、今と比較しての貧困を受け入れないといけないんですよ。

金持ってないと輸入する資源や食料が他国に競り負けて手に入れられなくなりますからね。

現状もう既にそうなってるじゃないですか。ちょっとずつ。

だから電気代とか小麦製品とか魚介類とか海外旅行の値段が高くなったりするわけです。

 

 

こうして経済的な面においては我々と他国との差が徐々に縮まっている。

例えば日本人がタイに旅行に行く。何でもめっちゃ安いやんみたいな気分になりましたよね。

今そんなタイから日本に観光客が続々と来ています。タイ人は日本大好きですから。

観光客だけじゃないですよ。

タイのホテルも続々と日本に進出してきてますよね。

京都のデュシタニとか、なんばのセンタラとか。どっちもタイの高級ホテル。

どちらも安めのお部屋で1泊だいたい3万円ぐらいですか。

まあね、海外旅行ならこのぐらいのホテル泊まってもいいなっていう気持ちになるでしょうけども、

年収400万前後の平均的な日本人がちょっとした国内旅行で泊まる金額のホテルではありませんよね。

こういうのは明らかにインバウンドの観光客目当ての高級ホテルなんだと思うのですが、

例えば日本人が海外で「日系のホテルなら安心ね」っていう感覚でニッコー泊まるのと似てますよね。

たぶんメインターゲットはインバウンド外国人の中でも日本に来るタイ人なんじゃないですかね。

日本人が昭和平成の感覚でアジア諸国の民を今も後れた貧しい人々と見ているうちに、

気付いたときには我々の差は大きく縮まってたり抜かされたりしているんですよ。

でもそれは必ずしも悪いことばかりではないんじゃないかと思っています。

これまでの日本が世界的に見て豊か過ぎたのです。特にアジアにおいては。

ほぼチートですよ、チート。

ゲーム全クリして最強の武器持って2周目に突入…ぐらいの強さがありました。

3時間でタイラント倒したらロケットランチャー持って2周目スタートできるバイオハザード的な。

我々はそれをこれまで当たり前だと思って生きてきたのです。

これだけ強いと「自分が先導しないと」「俺が引っ張っていかないと」ってなりがちですよね。

もちろんまだもっと豊かな頃に日本が主導して共同体を創設するのがベストだったとも思いますよ。

そんな外交力がこの国にあったとは到底思えないのもまた事実ですけども。

ですが現実にはアジアでのぶっちぎり一強状態から日本は自ら…じわじわと降りていますので、

これでようやく日豪ASEANが対等なパワーバランスで共存していける環境が整いつつあると思います。

西太平洋地域…安倍さんの言葉を借りるところのインド太平洋ですね。

この地域に一つの共同体を創る機は熟してきているのです。

時間はかかると思いますよ。ひとつにまとめるにはアジアは複雑かつ多様ですから。

「民族、宗教間の思想対立の根は深く、共同体が軌道に乗るには実に36年という年月が必要であった」

フロントミッションでもOCUについてそういった設定になってましたしね。

 

東西の二極思考からの脱却

 

地政学においては『ハートランド』と『リムランド』という概念があるのは有名です。

ハートランド:かつてのモンゴルや今のロシアにあたるユーラシア大陸中央部の国の拡張志向を、

リムランド:ユーラシア大陸を取り囲む『縁』である沿岸国が抑えにかかる…という、

世界はハートランドの国々とリムランドの国々のせめぎ合いであるという考え。

今の世界を見てると中国もハートランド寄りという感じがしますよね。

日本はもちろんリムランドの国です。

我々はまさにユーラシア大陸の外側、太平洋の縁に浮かぶ島ですから。

そのあたりを深海から涌いてくるクソデカ怪獣が襲う映画ありましたよね。

『パシフィック・リム』っていう。あれ太平洋の縁って意味ですからね。

映画の内容については詳しくないのでそのへんはファンの方にお任せしたいところなのですが、

自分がいまお話したいのはこの『縁』についてです。

 

皆さんは『縁』と聞くとどれぐらいの厚みを想像しますか?

勝手な想像ですけど、だいたいの人は薄っぺらいものを思い浮かべるのではないかと思います。

もっともイメージしやすいものは食パンの耳ですよね。

メインとなるものをぐるっと取り囲むものであって、センターの引き立て役のような。

ですが…ちょっと考えていただきたいのです。

縁の厚みってこれぐらいじゃなきゃいけない、っていう決まりなんてないですよね。

縁がめっちゃ分厚くたっていいはずです。

ハートランドたる権威主義的なロシアと中国が、やれウクライナだ太平洋だと外に膨張している現代、

縁の厚みが食パンの耳ぐらい薄っぺらかったら…あっさり破られてしまいますね。

油断をしてはいけませんが、ユーラシア西方のリムの厚さは十分にあります。

ヨーロッパほぼ全体だけでなく、その後ろに控えるアメリカまで含めた分厚い縁がありますから。

この縁がEUであり、それを含めて超えた集団安全保障システムであるNATOです。

ではユーラシア東方のリムの厚さはどうでしょうか。

日米、米韓、米台、米比、米豪…最近は米越も力を入れていますね。

アメリカが日本、韓国、台湾、フィリピン、オーストラリア、あと今進めてるベトナムと、

個別に安全保障や防衛協力をしているのですが…それぞれはバラバラです。

アメリカがいてくれるから大丈夫、ではないんですよ。

先程も書いた通り、アメリカ自体がインド太平洋への関与を減らす可能性があるわけですから。

トランプ再選シナリオが実現したら加速する可能性さえある。

現にトランプどころかバイデン政権でもアフガニスタンから退きましたし。

縁の厚みはどれだけあっても良く、我々自身で分厚い縁を用意していいはずです。

中国が言うところの『第三列島線』まで届くような…西太平洋全てぐらいの厚みの縁を。

 

 

「日本は極東なのか、それとも極西なのか」

かつてこのように問うたのは…誰でしたっけ。

トインビーかハンチントンだったと思うんですけど、どっちか忘れちゃったな。

どちらにせよ国際関係という世界においてはすっごい先生たちであるのですが、

「日本はユーラシアの最も東に位置するのか?それとも西側諸国の最も西にある国なのか?」

このように問うわけです。

この二極思考は結局のところ地政学的な二択なんですよね。

「お前らはハートランド側につくのか、それともリムランドとして生きるのか」っていう。

大多数の日本人にとって中露をコアにした権威主義ブロックに入るのは御免被りたいでしょうけども、

敢えてここで自分はその二極思考に「待った」をかけたいのです。

皆さんにはぜひ世界地図を見ながら聞いていただきたいのです。

どうして東か西の二択なんですか?って。

どちらも間違ってはいません。ユーラシアの最も東であり、西側諸国の最も西である。

ですが、自分は声を大にして言いたいのです。強く訴えたいのです。

 

「我々は、オセアニアの最も北の国である」

 

我々の住む日本は太平洋に浮かぶ島国です。

オセアニアは広大な太平洋に浮かぶ島々から成っています。

そうです。オセアニアはどこか遠い南の島を指すものではないのです。

太平洋に浮かぶ数々の島から成る我々の日本こそがいちばん北にあるオセアニアなのです。

東西の二極思考は考え方としてはあまりにも20世紀的だと思いませんか?

今は21世紀に入ってもう20年以上も経ったのですから。

冷戦はとうの昔に終わり、アメリカ一強時代も過ぎました。

G7の影響力の低下、そしてそれに取って代わろうとするBRICSの影響力増大。

確かに世界は「三つの帝国」の時代でしょう。今は。

しかしそれがいつまでも3つのままでしょうか。

今よりも多極化していく中で、我々は今後も盤面の駒のまま利用されていくのでしょうか。

いま求められているのは東西の二極思考を超えた、新たな道ではありませんか?

日本の生きる道、進むべき道は南にあります。

それは単にグローバルサウスに取り入る、取り込むということではないのです。

G7の一角である日本、価値観を共有する自由主義国のオーストラリアとニュージーランド、

そしてインド太平洋におけるグローバルサウスであるASEANが同じ地域として等しく手を取り合う。

21世紀の我々が作るのは日本が主導する大東亜共栄圏であってはなりません。

我々が目指すのは日本・オセアニア・ASEANが互いに対等な関係で地域の安定と繁栄を希求する…

フロントミッションにおけるオシアナ共同連合であるべきなのです。

超高齢化と人口減少社会となった日本が単独で繁栄を謳歌しようというのは難しいと思います。

我々はインド太平洋の一員として生きていく。

ここにこそ道が開けているのだと思います。22世紀の繁栄への道。

次の100年を作り、さらにその先の100年へと繋ぐために今の我々にできることがあるはずですから。

 

 

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