こんにちは。

西宮・夙川にある「マンツーマンでお客様の髪のお悩みに真剣にお応えする」がコンセプトの

小さなプライベートサロン【Ricos】の佐久間 将でございます。

円安、ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー価格の上昇…

昨今はいろいろな理由でいろいろなものが値上がりしていますね。

特に贅沢をしているわけでもないのに生活が苦しくなったと思う方もおられると、

ニュースやSNSでそういった声を聞くこともあるかと思います。

それは確かにその通りなのかもしれません。

ですが…それってこれまでの安さに慣れてしまっているだけだったりしませんか?

こういう話は決して万人受けするものではなく、むしろ反感を買う場合さえありますし、

今回は敢えてけっこうキツめの言い方で記事を書いています。

それは承知の上ですが…それでも今回はこの内容で書きます。

波風を立てることでお読みの皆様にもこの問題を考えていただけたらいいな…という願いですね。

本日も拙文をご高覧賜りましてありがとうございます。

それではどうぞ。

 

『安いは正義』を疑え

今回の記事のタイトルにも使った「いいもの安くて当たり前」のフレーズ。

どこかで聞いたことがある人もいるかもしれません。

若い人には通じないかもしれませんが、これ実は昔のCMでちょろっと使われてました。

…なんて書きましたが今調べて個人的に衝撃の事実を知りました。

そのCMはメガネドラッグというメガネ屋チェーンのものなのですが…関東にしかないんですね。

これじゃこの話通じないわ。失礼しました。

お客さんに話すのやめとこ。あーびっくりした。

で、そのCMを知らなくても今の日本人にはそのマインドの人が相当な数でいるはずです。

ついこの前誰かがやった数ヶ国で調査したアンケートの項目に

「あなたが通っている商店が値上げをしたらどうしますか?」という問いがありまして、

「その店に行くのをやめて他の安い店に行く」と答えたのは日本人が最多とのことでした。

買おうとしている商品やサービスによっても違うだろうと思うので一概には言えないでしょうけど、

値上げされたらもうその店に行かない、他の安いとこに行くという行動をとる日本人は多いようです。

これは日本においては安い商品やサービスでも品質が保たれているからこそだろうと推測します。

 

 

日本では『安いは正義』なんですよ。

安かろう悪かろうは許されないのです。安くても質を落としてはいけないと。

だから安いお店や値上げをしないお店を『良心的』などと言うのです。

企業努力でがんばってます!お客様にご奉仕します!

こういう空気の中で値上げするとものすごく不評になったり叩かれたりしがちです。

だからマクドナルドが値上げをするとものすごく怒るんですよ。

 

マクドナルド、約8割の商品値上げを発表!チーズバーガーは200円に。値上げ価格一覧 | 吉祥寺ファンページ

日本マクドナルドは、2023年1月16日(月)より全体の約8割の商品を値上げすることを発表しました。 値上げ幅

 

たかだか20円かそこらの話ですよ。

チーズバーガーが180円から200円になったとかいうレベルの。

これ発表されたときのtwitterなんかブーイングの嵐でしたからね。

「ふざけるな」「高すぎる」「もう食べられない」みたいな。

安いことが正義なのですから、その反対はまさに悪になりますよね。

高いとか値上げは現代の日本では悪の行為なのです。そういう店には良心がないと言わんばかり。

でも昨今は「本当にそれでいいのか?」と考えさせられることも増えてきたはずです。

 

…そう考えている、あるいは最初から安いは正義という考えではない人たち。

価格の安さこそ唯一正しいって価値観を疑う(もしくは最初から信じてない)健全な皆様。

そういう皆様とは違う層に考えてほしかったりするのですが、

残念ながらそういう層にはあまり届かないんですよね…こういった話って。

話すって難しいものですね。でも諦めずに伝えます。

安いだけが正義ですか?高いお店には良心がないとお考えですか??

 

価格はフィルター

 

前項で書いた…昨今の「本当にそれでいいのか?」と考えさせられること。

回転寿司で別卓の注文した寿司勝手に横取りしちゃうだの、皿とか醤油さし舐めるだの、

まともな感覚のある人ならドン引きしたり怒りが湧くような迷惑行為の数々。

まずはそれですよね。考えさせられることって。

 

批判は承知の上で敢えて書きます。

どんな業種で何を扱うにせよ、価格を下げると客層が悪くなります。

これ、サービス業に従事する人ほぼ全員から同意をとれると思います。まず例外はありません。

高いお店だからって悪態つく客が来ないわけではないし、お安いお店にもいいお客様は来店されます。

ですが、いわゆる低価格帯のお店に質の悪い迷惑客が多数集まるのも事実です。

その最たるものはスーパーであり、ドラッグストアですね。

難癖、暴言、言いがかりなんて日常茶飯事っていう愚痴はSNS上に溢れかえってます。

学生の頃にスーパーのレジで4年間バイトしてましたけど、あの頃より今のほうが大変でしょうね。

明らかに今のほうが客の質落ちてますから。

あの頃だってヤバい客それなりにいましたけどね。20年ちょい前の話ですけど。

例えば…スーパーって袋詰めのときビニール袋ぐるぐるして持って帰るおばはんいますよね?

あのビニール袋のロール1本丸ごとくれって言われたんですよ。そんなことよく言えるなと。

…7万歩譲って売ってくれならまだしも、備品のロールポリ1本タダでよこせって何考えてんだよ。

でもたぶんこんなんかわいいもんだと思いますよ。今の時代だったら。

ちょっと検索しただけでヤバい奴わんさか出てきますからね。

品出しかチェッカーかに関わらず、スーパーやドラスト従業員の皆様…本当にお疲れ様です。

そして回転寿司やファミレス、居酒屋などの飲食店の皆様も本当にお疲れ様です。

心中お察し申し上げると同時に深く同情いたします。

 

もちろん理美容室も例外ではありません。

かつて少し安めの…プチプラサロンなどと呼ばれる価格帯の美容室で働いていたこともあります。

そういうお店ってときどき来ますよね。すっっっっっっっっごいヤバい奴。

そのあたりの話は後日まとめて別記事にしようかなと思っているのですが、

まぁ…すごいこと言われますよ。とんでもないのが来ますよ。

それでもプチプラサロンだからまだいくぶんかマシなのかなという思いもあります。

だって心斎橋とかなんば行ったらもっと安い店ありますもんね。

あんな料金の店なんか安すぎて怖くて行けないわ、っていうお値段の。

そんなね…値段だけじゃなくて客層も恐ろしいですよ。絶対働きたくない。

低価格帯の理美容室と言えばいわゆる1000円カット的な業態のお店が有名ですが、

そちらについては先日書いたこちらの記事でも少しお話してあります。

 

【実は簡単】メンズヘアのスタイリングのコツ

      こうおっしゃるお客様の声はとても多いです。 なんで美容師がやるとうまくいくのに自分でやったらできないんだろう。 そういうお悩みに今回はお応えしていけたら…

 

スタッフに悪態をつく、できないことを当然のように無茶振りする、理解不能な言動…

こういったことをする人々が低価格帯サロンには流れてきます。

客と呼ぶのも嫌な気分になる奴らのことを理美容業界に限らず一般的には『クソ客』と呼んでいます。

これが大変汚く不適切な言葉であることはサービス業従事者として誰しも自覚しておりますが、

クソ客にはクソと呼ばれるだけのクソたる十分な理由や所以があるためクソ扱いも致し方ありません。

もはや客ですらない奴らとかもいますからね。ほんとに。

そういう奴らはお店の価格帯が上がると遭遇率が下がります。

モンスターとのエンカウント率が低めになるんですね。

「あーあ、どうせモンスターに遭遇するならはぐれメタルがいいなー」などと考えたりしますけど、

なんにせよこの夙川あたりのお店は当店も含めて似たような料金の美容室がいっぱい。

これくらいの料金のサロンが美容室では一般店とされています。高級店ではなくて。

こういったお店のお客様はほぼ全員がきちんとしていて穏やかなお客様。

上掲のリンク先にある記事にも書きましたが、お客様の棲み分けは主に価格によってなされます。

お店選びの基準が値段だけの人は本当に値段だけを見るので安い店に集まりますし、

値段以外の付加価値を含めて選ぶ人にとっては価格の安さはそこまで問題ではなかったりしますね。

サービス業にとって価格とは客の質をふるい分けるフィルターです。

価格を下げるほどザルの目が細かくなって何でもひっかかるようになるわけで。

 

お寿司屋さんだってそうなんですよ。

1皿100円ぐらいの回転寿司はファミリー層にも大人気ですが、粗悪な客も来てしまいます。

で、カウンター席の回らないお寿司屋さんは誰しも高級なイメージを持っていますよね。

そんな高級店はおいそれとバカが入れる空気ではないのです。まず来ません。

小売店も同じ。

コンビニは客もバイトも質が低いですが、成城石井やいかりスーパーではそんなことないでしょう。

クソ客は虫です。安値はライトみたいなもんです。

明かりに誘われて集まる蛾と誘蛾灯の如きものですよ。

こういうこと言うと自分の客観的評価が下がるだろうことはわかりますよ。なんて奴だって。

人間を虫扱いした、質が悪いとはいえお客様を蛾と同じって言った…って。

でも事実ですからね。

スシローのナメナメ野郎とか、天かす食い散らすバカとか、アイス直食いするガキとか。

それは生物学的にはヒトですが、サービス業的には害虫です。

害虫であれば対応は決まっています…駆除ですね。叩き出すのみ。

実家が立地的に湿気が多くてムカデ屋敷だったので、虫は大嫌いですけど駆除は慣れてますよ。

 

お客様を神様と崇め奉る邪教

 

クソ客は虫も同然。追い出せ叩き潰せ容赦するな。

そう言うと同業者やサービス業の皆様からは「そーだそーだ!」と共感の声が集まります。

みんな手を焼いているし本当に大嫌いだからです。

でも、そういうことを言うと怒りだす人々がいます。

 

お客様は神様!!!

店に1円でも払ったら私はお客様!!!

 

こういう人たちですね。

間違えてほしくないのは、自分はお客様の収入をどうこう言っているわけではないのです。

低価格店の客層が悪い傾向にあることは事実ですが、お客様が貧乏か金持ちかは関係ありません。

当人の性別や収入に関係なく、まず上記のセリフが出てきた時点でクソ客と判断しています。

それこそが全ての諸問題の根幹と言える間違った思考だからです。

間違えているにもかかわらず企業・従業員にそれを強要する奴は例外なくクソです。

「昔の商人はお客様の家のほうに足を向けて寝ない」とか何とかいう話もありますが、

とにかく都合のいいくだらない理屈をこねて自分に従わせようとして要求を通そうとします。

『お客様に真摯に向き合って接客すること』は『どんな要求にも笑顔で応えること』ではありません。

 

  • 店のルール、モラルやマナーに反する要求
  • 支払い拒否、値引きの強要、メニューの変更・追加によって発生する追加料金の拒絶
  • 不可能な事柄を可能にするよう強要すること
  • 理由の如何を問わず客側の要求を全て受け入れるよう求めること
  • 従業員に対する暴言・暴行

 

これらの行為はサービス業として絶対に受け入れるべきではありませんし、受け入れてはなりません。

普通に考えれば当然どれもしてはいけないことなのです。

上記の行為に及んだ時点でその人はお客様とは言えません。

ですが…なぜかこれらの行為が許されると思うどころか当たり前のように行う人がいます。

きっと「そんな奴いるかよ」って思われる方もおられるでしょうね。

そう思われている方はきっととても恵まれた環境で生活されていらっしゃるのでしょう。

実際には存在しますからね。残念ながら。

彼ら・彼女らは自分たちはお客様だと考えるから上記の行為も当然許されると思っています。

 

1円でも代金を払えば自分はお客様

お客様は神様である

代金を払ってやっている自分たちは神様だから従業員よりも偉い

従業員はお客様の要求を笑顔で丁寧に全て受け入れろ

お客様の言うことを聞かない従業員は悪

 

こういう思考回路です。

自分は正しく、相手は間違えている。

神である自分は善であり、神の意思に背く相手は悪である。

店側にとって客からの不当な要求や迷惑行為、暴力や悪質なクレームとされる行為。

それらは全てクソ客にとっては自分の要求を通すために必要な正しい行動となります。

彼らにとってそれは聖戦なのです。神様が悪に負けることなどあってはならないのですから。

商業サービスだけでなく…看護、介護、保育、教育、公共交通、自治体窓口などの対人サービス全て。

それらを含めた日本の広義のサービス業の現場は宗教戦争の最前線なのです。

神であるお客様を崇め奉れと、クソ客はそういった教義を周りの者に実力行使で広めようとします。

もちろん本人たちはそんな深いこと考えていないのでしょうけど、

彼らの頭にあるのは「自分は偉い、言うことを聞かないお前が悪い」だけです。

だから1円でも払ったらお前らは俺に尽くせとなるわけです。

お前らサービス業なんだろ。お客様に奉仕するのは当たり前だろ。こうなるわけですね。

最低の料金で最高のサービスを受けようとする人々の何と多いことか。

昔どっかのLCCが「うちは運賃安いからサービス削ります」って言ったら袋叩きにされてましたよね。

プチプラサロンで4000円のカラーカットのクーポンでミルクティーベージュにしたいって言う奴とか、

1000円カットで尊大な態度で事細かに注文つけてくる上に髪がジェルでガッチガチの奴もいますね。

自分の要求は言えば何でも叶うと思っている。むしろ叶えられないのはおかしいと思っている。

『お客様は神様』思考はカルトなんですよ。邪教です。

彼らは自分たちを崇め奉ってもらいたいのです。最低限の料金で。

 

 

邪教の魔神と戦うにはサービス業側にも本尊や教義にあたるものが必要です。

それこそが『適正な対価』なのです。

高いか安いか聞かれたら、どっちかと言えば安いほうがありがたいのは確かでしょうね。

でも経営側にとって価格は客の求めに応じるがままに安くすればいいというものでもないわけです。

収益事業はボランティアじゃないので。経費や手間賃、付加価値を反映するのは当然のことですから。

値決めは事業者の専権事項。

事業者が提供する価値をお客様がご理解くださり納得いただければ価格設定はいくらでもいいんです。

ホスピタリティや選択肢の幅を削るかわりに安価で提供するもよし、

努力と学び、細やかな配慮とこだわりを高価な価格で提供するのもよし。

どちらもありなのです。どっちがいい悪いはありません。

これが我々のサービスに対する適正な対価ですよ、という点をブレずに掲げ続けていくのです。

それが値段に見合っている、あるいは割安であると思ったときにお客様はお得感を覚えます。

いわゆる『コスパがいい』というやつですね。

逆にこのサービスでこの値段は高いなと思ったらお客様は店から離れていきます。

それは事業者側の大きな課題です。

お客様が納得するところまで値段を下げるか、自身で努力して提供する価値を伝えるか。

だから稼ぎたいからってやみくもに値段を上げればいいというものでもないわけですね。

それを判断するのはお客様ですから。判定はとてもシビアなものです。

適正を実現するためにサービス業側に求められるのは自身の自律と努力。簡単ではありません。

こういった背景を無視してとにかく安くしてほしいけど希望は全部叶えてほしい…という考え。

それはサービスを提供する側に対して失礼です。価値を無視してますから。

そういう邪教の魔神とは断固として戦い、断固として勝利していかなければなりません。

判断基準が値段だけの人は、その人に相応しい低価格店に行ってもらいましょう。

そのお店のお値段に見合った適正なサービスを受けてもらいましょう。

 

…えっ、店側が客を選ぶなんてとんでもないって?

ここまで読んでまだそんなこと言います? 従業員とお客様は対等ですよ。

テレビで取り上げられるほど賛否両論ありましたが、基本的にはこれなんですよね。

Ricosは価格帯で言えば低価格店ではなく一般店です。だいたい近隣と同じぐらいかな。

ですので当店にお越しくださるお客様の扱いをメニューの料金で変えることはいたしません。

上のツイートは過激な物言いですが、ここまでしないといけない魔神が日本に増えたということです。

そして何よりも大切なのは…クソ客をのさばらせて困るのは店だけじゃなくて他のお客様なんです。

水準をクソに合わせると店もクソになります。

まともなお客様にとっては居心地が悪くなります。居心地の悪いお店からはお客様は離れます。

そうなると店に集まってくるのはクソ客ばかりです。類は友を呼ぶは真理ですね。

そんなお店に素敵なお客様は集まらないんですよ。良いお客様がいたいと思える場所じゃないから。

繰り返しのようになりますがもう一度書きます。

クソ客を叩き出すのは自分の為ではなく、何よりも他の大切なお客様のためなんですよ。

だからこそサービス業にとってもクソ客との戦いは聖戦なのです。

悪に負けてはいけないのですよ。大切なお客様のためにも。

 

『安いニッポン』で得をするのは誰なのか

 

最低限の料金で最高のサービスを求める。

前項でも書きましたね。

クソ客はそれを極めてるからクソなのですが、クソじゃなくてもこの考えの人って案外多めです。

それはこの30年の間デフレで物価が上がらなかったからでしょうね。

その間にドン・キホーテやユニクロの出現どころか、amazonやGUにメルカリ、

外食産業も安くておいしいチェーンたくさんですし、旅行もHISに航空会社はLCC、

100均や300均もできて、理美容だって1000円カットにプチプラサロンや低価格店…。

昔はなかったけどこのお店のおかげで安く揃えられる、ってものだけは本当に増えましたよね。

「おっ、安くても案外悪くなかったね」って経験があると試しやすくなるのは確かにありますし、

中にはそれまで行っていた高級サービスや一般店に景気のせいで行けなくなった人もいるでしょう。

通常であれば価格相応の質になるものです。そう理解するものです。

これまでさんざん書いてきた通り、サービスには適正な対価があるものですからね。

それがそうならなかった最大の理由が『お客様は神様』という信仰なんですよ。

 

  • 「こっちはお客様なのになんで態度が悪いんだ!やる気あんのか!」
  • 「周りの店はがんばってるのに何で値上げするの?企業努力が足りないんだよ、もう来ないわ」
  • 「そりゃここは安い店かもしれないけど私たちお金払ってるんですよ?」

 

自分たちはお客様だから偉いんだと客側自身が思っているわけです。

実際にこういうクレームは多発したでしょう。今でもあると思います。

これに企業やお店側が委縮してしまう。あるいは忖度する。

そうすると価格に転嫁できなくなるんですよね。

価格を下げると同時に質を下げるのはコスト面の問題が大きいですね。

価格を下げたところで例えば材料の仕入れの値段が安くなるわけではないですし、

お客様への売値を据え置いたからって家賃や光熱費が下がることもないですし。

そうなるとどこかでコストダウンを図ろうと思った場合、商品やサービス自体を削るようになります。

いわゆるステルス値上げというやつですね。

ケンタッキーのビスケットもミスドのハニーチュロも小さくなりました。

プリングルズ開けたら筒いっぱいに入ってたのも今やはるか昔のこと。

安さを求めた結果として商品やサービスが削られて…これ誰か幸せになりました?

結局「お値段据え置きでも中身減った」ってぼやいたり文句言って終わりですよね。

中身減ったぐらいならまだいいほうですよ。

もし削られるものが生活インフラや公共サービスの質や安全性だとしたらどうですか…?

 

そして何よりも賃金ですよ。従業員に昇給をしてあげることが非常に難しくなる。

日本は全般的に昇給しないどころか賃金が下がっているような国なので伝わると思いますが、

給料ってモチベーションに直結しますよね。

サービス業なら接客に手を抜くな!給料を言い訳にするな!っていう声も出るでしょう。

でも考えてみてください。お客様だけでなく我々サービス業に従事する者も同じ人間なのです。

人間である以上は感情があります。

相手したくもないような人が相手で、その言動に堪えるのはとても大きなストレスなんですよ。

「それも業務のうち」と割り切るにも限界というものがあります。

その限界を押し上げるのは報酬であって、決してやり甲斐ではありません。

それをやり甲斐に求めて正当な報酬を払わないことが問題なんですよ。

これを求め続けて大きなストレスを受け続けるとスタッフの心は壊れます。

低賃金で高品質のサービスを要求され続けることで今まで何人の人々が病んでいったでしょう。

スタッフを使い捨てにして幸せになる人は誰もいません。

ただクソ上司とクソ客の自尊心を満たすだけで終わりです。

 

さて。

これらの結果としてサービス業従事者の労働生産性は上がりません。

日本社会全体で見ても賃金は上がりません。

21世紀に入って一体どれだけの数の国に1人あたりのGDPを抜かされたか。

世界経済全体で見て日本『だけ』がどんどん縮小しているんですよ。

この縮小ぶり、日本国内で生活していたらそれほど実感が湧くことはないはずです。

デフレ下で『安くていいモノ』『安くていいサービス』が充実しましたからね。

でもそれらは事業者側、従業員が泣くことで成り立っていたものです。

コストを価格に転嫁できず、従業員の賃金や待遇にも反映できず。

そういうものを『企業努力』と呼び、そういうお店や会社を『良心的』と呼んでますよね。

安くていいモノを当たり前のように求め続けたら、みんなで貧しくなったわけです。

それをこれまで最も実感する機会は海外旅行だったはず。

「前に行った時よりも高いな」「日本と比べて高いな」と感じることありましたよね?

それだけ日本の国力が落ちたんです。大きく衰退してるんです。

そしてついにそれを国内にいて実感するときが来てしまったのですよ。

もはや輸入コストの増大を企業努力で解決できなくなったことで続々と値上げが始まり、

日本の物価水準を割安でお得と感じる外国人観光客が大挙して押し寄せて来ますよね。

かつて日本人がアジア圏に旅行して「なんでも安いなー」という感覚になったのと同じで、

日本に来る外国人は「日本やっすいなー」と思って観光に来るわけです。

『安いニッポン』で得をするのは日本人ではなくて外国人なんですよ。

観光だけでなく、資源や食料を輸入するときにも他国にたくさんお金を支払っている。

それでも石油や天然ガス、鶏肉やマグロなどを買おうと思っても競り負けてしまう。

日本よりも他の国がもっとお金出したら売る側は当然そっちに売りますからね。

現実は既にそのようになってしまっています。

 

昔に比べて可処分所得が減ってしまった中で、お金を使おうという意識は小さくなったでしょう。

高いものより少しでも安い方がありがたいと思うのもわかります。

それでも、これからはサービスや商品に対して適正な対価をきちんと支払う時代。

『安いは正義』『いいもの安くて当たり前』では誰も幸せにはなれないのです。

もちろん使える金額には限りがあるのもまた当然のこと。

だからこそ「私はこれに価値を感じる」と思うものをしっかり選んでお金を使う。

何のどこに価値を感じるかは人それぞれ違うので、価値を感じるものは何でもいいのです。

商品やサービスを提供する側はお客様に『ここにしかない価値』を感じてもらえるかどうか。

今後は今まで以上にそこに注力していかないといけないなと思います。

そして、あまり価値を感じない部分は安く済まそうとなると思うのですが、

その際に商品やサービスの質を強く求めてはいけません。それが値段相応というものです。

それを「お客様は神様」などと言って強要する限りは、日本のブラック体質は絶対に終わりません。

そんなカルト宗教さっさと捨てろ。ダサいぞ。