こんにちは。

西宮・夙川にある「マンツーマンでお客様の髪のお悩みに真剣にお応えする」がコンセプトの

小さなプライベートサロン【Ricos】の佐久間 将でございます。

自分が関西に引っ越してきてもうすぐ6年になろうかという頃ですが、

今年ほど雪が降った年はこれまでなかったですね。

これを書いてる今日も予報では雨のはずだったのに雪でした。

地元の横須賀よりも関西は明らかに寒くて未だにこの寒さに慣れません。

自転車乗るときも手袋とイヤーマフは必須。

横須賀にいたときはさすがにイヤーマフまでは使ってなかったんですよ。

というのも…関東でもかなり南にあるうちの地元、横須賀市。

そうそう雪なんて降りません。隣町の横浜が雪でも横須賀はだいたい雨。

子供の頃は毎年雪降ってたんですけどね…。

これは地球が温暖化しているのではなくヒートアイランド現象だと思っています。

大都市圏だけ気温が上がっているのではないかと。

今回はそんな雪慣れしていない自分が遠い昔にやらかしたことのお話です。

わりとくだらない話なのでてきとーな感じかつ軽い気持ちで読んでくださいね。

本日も拙文をご高覧賜りましてありがとうございます。

それではどうぞ。

 

寒い日の温かいものという誘惑

 

これは今から17年前の話。

専門学校を卒業して新卒で入った美容室が横浜にありました。

神奈川県外の皆様は横浜というとみなとみらいを思い浮かべるかと思いますが、

自分が働いていたのは駅で言えば関内(かんない)というところ。

横浜スタジアムがあったりイセザキモールがあったりする古くからの繁華街でもあり、

神奈川県庁やら移転前の横浜市役所もあったりする行政とビジネスの街でもある。

横浜の古い中心街といったところです。

ここの街外れの美容室で働いていました。

街全体が下水臭かったり付近がいかがわしかったり…なんかきったない街でしたけども。

 

今回のお話はその職場で迎えた大晦日のこと。

この職場…普段から10時オープンなのですが、12月31日は12時で店を閉めてまして。

もはや何のために出勤したのかわからない。大掃除のためみたいなもんでしたね。

この年の年末はとても寒かったです。

寒かったですけど例年通り横須賀は雨。普通に傘をさして最寄り駅から電車に乗って。

それが横浜市内に入ったら雪なんですよ。ちゃんと数cmは積もってる感じの。

で、職場で2~3時間過ごして今年もお疲れ様みたいな感じで帰ることになったんですけども、

雪が残るぐらいだから昼でも当然めっちゃ寒いわけです。

関内駅まで歩いて10分あるかないかなんで全然遠くはないんですけど、

寒さが我慢ならなかったんですよ。これきっついなと。

駅までの道中ちょうど中間地点ぐらいのところにセブンイレブンがありましてね。

何か温かいものが欲しくて入ったんです。

紅茶花伝がいいかなーどうしようかなーなんて思いながら店内を歩いてたんですが、

レジ横の中華まんを見て「お、今日はあんまんの気分」ってなったんですよ。

甘いものが大好きなので中華まんを買うときはいつもあんまん一択の自分。

買ったばっかりのほっかほかのあんまんを手に持ってセブンから出ました。

でも食べたいんですけどちょい猫舌気味なのでいきなりガツガツとは食えない。

一口だけかじって「あっつ」って。ファブルかよ。

とりあえず少しでも中身が露出していれば冷めやすいだろうと思ってかじったんですけど、

この行動が後に大惨事に繋がるとはこのときはまだ思いもしませんでした。

 

せっかく持ちこたえたのに…!

 

そんなわけで一口だけかじったあんまんを片手に駅までゆっくりと歩いて。

イセザキモールの入口から地下道に入って、JR関内駅のところへ。

ちょうど地下道の出口で何かチラシを配っています。

ここいつも誰かが何かを配ってるんですよね。ティッシュとか。

今はほとんどのものをスルーするのですが、この頃は律義にほぼ全部もらってました。

受け取ったチラシはハプニングバーなどという超絶いかがわしい業態の店のもの。

まぁ関内らしいっちゃらしいんですけど…関内っていうより黄金町とか曙町ですかね。

なんにせよ当店のある夙川や、付近の苦楽園や芦屋には間違っても存在してはいけないタイプの店。

チラシの見出しには『ハプニングバー優良店』などと書かれていまして、

「こんな店で何が優良店だよ」とか思いながら改札を通って階段を上ってホームに向かいます。

ホームに上がったらちょうどいいタイミングで電車が来ましてね。

寒い中待たなくてラッキーだわと思ってすぐ電車に乗ったんです。

 

 

乗り換えで使う横浜駅で、最も乗り換えに便利な階段は電車のいちばん先頭車両のところ。

毎日乗っててそれがわかってるので、電車の中を先頭車両に向かって歩いて行ったんですけども、

外では気をつけて歩いていたのに電車の中で足が滑っちゃったんです。

おっとっと…って感じで数歩進みつつどうにかバランスを取り直すことに成功して、

あー転ばずに済んだわって思った最後の一歩で思いっきり滑ったんですよ。

尻もちをつく感じで、後ろにバーンって。

自分でもすげえ音したなと。電車の中も静まり返ってて。

起き上がって振り返ったらほかの乗客が全員こっちを見てるんです。

大した人数じゃないけど本当に全員。すごい顔してこっちを見てる。

こういうときめっちゃ恥ずかしいですよね。

とりあえず平静を装って立ち上がったんですけども、ふと気づきました。

 

手にあんこがついてる。

 

どうも思いっきり転んだときに力が入ってあんまんを握り潰してしまったようで、

一口だけかじった穴から出てきたあんこが手にかかってしまったようでした。

あー、もったいねえなと思ったんですが…もうひとつ気づいたんです。

 

あんこってこれだけしか入ってなかったっけ…?

 

手についてたあんこは少量。

あんまんの皮から見た中の空洞から考えても、これで全部なわけはないなと。

気のせいなのか?いや、違う。

だとしたら残りのあんこはどこに…?

自分の服やら周囲やら見回して、ついに衝撃的なものが目に入ってしまいました。

 

 

ドアにくっつく1本の黒い筋。

金魚のフンのような…いや、それよりは色や太さ的にも猫のフンのような…

とにかく見た目ではもはやあんこなのかうんこなのかわからない黒くて長い何か。

これが口をつけることなくそのままなら握り潰したら四方八方に飛び散ったんでしょうけど、

一口だけかじって小さく穴が開いていたことでいい感じにニュルニュルっと射出されたんでしょうね。

きっと射出する過程の一部始終を他の乗客は見ていたんでしょう。

そりゃあんな顔にもなるわ。

ドアにくっついた猫の長い1本グソみたいなあんこ。

衝撃的過ぎて数秒ほど呆然としました。

マジかよ。どうしよ…これ。

 

始末に負えない職人技

 

とりあえずあんこを何とかしないといけない。

手についたあんこはあんまんの皮で拭って食べれば消せるにしても、

ドアについたあんこは何かで拭かなきゃ。紙だ、ポケットティッシュなかったっけ。

っていうかティッシュで拭くとかやっぱりうんこじゃん。

ちげーよ、あれあんこだから。汚くねえし。

みたいなことばかり浮かんで混乱しながらカバンの中を探したのですが、

こういうときに限ってポケットティッシュは持ってないわけです。

JR京浜東北・根岸線は駅間距離の短い都会の路線。

混乱しつつひたすらティッシュを探す自分の耳に、いつもの聞き慣れたアナウンス。

「まもなく桜木町、桜木町。お出口右側です」

 

右側って…ドア開いちゃうじゃん。

 

ちょっと待ってまだ拭いてねえから。開けたらヤバいって。

手元にある紙といえばさっき受け取ったハプニングバー優良店のちっちゃいチラシのみ。

こんな硬い紙でうんこ…いや、あんこがきれいに拭けるかよ。

っていうか全部拭き取るには紙が足んねえんだわ。

拭くのに紙ないとかマジで小学生のうんこネタじゃねえか。

駅間距離1kmもない、時間にして関内発車から桜木町到着までせいぜい1分あるかないか。

…文章にしたら長いですけど、前項の電車に乗ったところからここまで数十秒の出来事。

ごくわずかな時間が文章だとスラムダンクぐらいめっちゃ引っ張った感じになりますね。

本当にこういうときってわずかな時間なのに、ものすごくいろんなことが頭の中で起こるんですよね。

走馬灯ってこういうもんなのかなと。

そんなめちゃくちゃ焦る自分をよそに、電車はゴトンゴトンと音を立てて桜木町駅の4番線へ。

無情にもピポーンピポーンとドアは開いてしまいました。

戸袋に飲み込まれていくあんこ。

それを「あー…」って見てるしかできなかった無力な自分。

ドアの開け閉めであんこをきれいにこそぎ取ってくれてないかな、という淡い期待もしたのですが、

そんな期待はピポーンピポーンとドアが閉じるのを見てあっさりと打ち砕かれました。

 

 

戸袋って厚いゴムついてるんですよ。

このゴムがまさにヘラになって、あんこはドアとゴムの隙間ぶんの厚みで均一に薄く引き延ばされて。

開くときと閉じるときどっちも延ばされてるから往復ビンタみたいなもんですわ。

まるで左官屋がセメントか漆喰をコテで均一に塗る熟練の職人技を見せられた気分。

もはやどうあがいても小さなチラシ1枚では拭い取ることができない面積のあんこ。

1本グソ状態なら端から掬うようにこそぎ取ればよかったのかもしれませんが、

これだけワイドに引き延ばされるときれいに掬い取ることもできませんし、

拭こうと思っても余計に延ばしてしまうだけになってしまいます。

もはや詰みです。完全に詰みました。

 

次の停車駅は横浜。乗り換えで自分が降りる駅です。

窓の外に見えるアンパンマンミュージアム(移転前)とスーパーオートバックス(現在は閉店)。

それが今いるおおよその位置を教えてくれています。

横浜駅到着までもうほとんど時間がありません。

…自分は考えました。

慌てて拭いたところでもうどうにもならない。自分は次の駅で降りる。

ましてや横浜駅は神奈川県最大の駅。ここでほとんどの乗客は入れ替わる。

 

無理だな。諦めよう。

 

何も知らなかったことにしました。

はっきり言って最低です。自分のこの考えは最低です。

本来ならなすべき処理をすることを諦めて知らないふりをすると決め込んだわけですから。

とはいえごくわずかな時間しかない中できれいにすることはもはや不可能。

後始末をするには時間も道具も、当時の自分の頭では万策尽きていました。

慌てふためくのも却って恥ずかしい。

もう電車が走るのは横浜駅に着く直前の大きな右カーブ。

自分はひたすら真顔で吊り革に掴まって到着するホームにいるたくさんの人々を見ていました。

だいたいこんな感じで。

 

 

…すげえ乗ってくんじゃん。

自分は降りるとはいえ、後から乗ってきた人のことを考えるとものすごい罪の意識が芽生えます。

またしても右側のドアが開くので、横浜駅から乗る人はドアにあんこついてるの気付けないんですよ。

閉じたドアの内側にあんこべったり付いてるわけですから。

知らずに寄っかかっちゃったら服に付いちゃいますよね。普通は閉じるドアなんて見ませんし。

確か大宮行きだったと思うので、自分が降りた後もまだ電車は埼玉県まで1時間ぐらい走ります。

京浜東北線はもちろん途中で東京都心も通ります。たくさんの人が乗り降りするでしょう。

絶対誰かしらの服にあんこ付いちゃうだろうことは深く考えなくてもわかります。

知らずにドアに寄りかかって服にあんこ付いちゃった見ず知らずのお方。

最悪な大晦日にしてしまって本当にごめんなさい。

ただそれだけを繰り返し念じて自分は横浜駅の階段を下りて改札を出ました。

 

時効があるかわかりませんが、17年前のことなのでネタみたいに話してますけども…

全ては雪の日にあんまんを一口だけかじって片手に持ったまま歩いたのが原因です。

昔クレヨンしんちゃんでしんのすけがたい焼きのしっぽの下あたりに箸で穴をあけて、

そこからあんこをニュルニュルと絞り出して金魚のフン状態で食べてましたが、

小さめの穴をあけてあんこ入り菓子を握ると本当にあんこは1本のひも状になって出てきます。

皆様は雪の日に飲食物を手に持って歩くのはやめましょう。

飲食物を持ち歩く、飲み食いするなら必ず席に座ってからにしましょう。

しくじり先生からのそんなアドバイスをもって今回の記事を締めくくりたいと思います。

マジでやんないほうがいいよ。絶対。