
こんにちは。
西宮・夙川にある「マンツーマンでお客様の髪のお悩みに真剣にお応えする」がコンセプトの
小さなプライベートサロン【Ricos】の佐久間 将でございます。
今ぐらいの時期ってどこもイルミネーションきれいでいいですよね。
兵庫県でイルミネーションと言ったら、やっぱりKOBEルミナリエじゃないですか?
あれ本当にきれいですよね。行ったことある人も多いかと思います。
実は昔…ルミナリエをつけたことがあります。
初日の点灯式ではありませんが、ルミナリエを自分の手で点灯させました。
見に行ったことある人はたくさんおられるのはわかりますよ。
期間中はおそらく毎日数万人の人出があったはずですから。
でも…点灯させたことがある人となると激レアだと思うんです。
当たり前ですけど点灯させるのって1日に1回しかチャンスないですから…。
イルミネーションの時期ですし、今回は「なんでそんな激レアな経験をしたのか」の話です。
本日も拙文をご高覧賜りましてありがとうございます。
それではどうぞ。
そもそもKOBEルミナリエとは

関西圏の方には今さら説明するまでもないものだとは思いますが、
他の地方だと知名度そんなにないと思われるので一応説明から始めます。
関東だとさがみ湖イルミリオンとか東京ドイツ村のやつのほうが有名ですし。
まず、よく知らないという方は神戸ルミナリエの公式ホームページをご覧ください。
そちらにも書いてあります通り、クリスマスシーズンのためのイルミネーションじゃないんです。
阪神大震災で犠牲になられた方々の鎮魂と、神戸の復興のために灯されるもの。
ちょうど開催時期的にクリスマスとかぶりますけど…ちゃんと意味のあるものなんです。
ルミナリエのメインは旧居留地の仲町通にずらっと並ぶ『ガレリア』でしょう。
光の大聖堂とでも言うような…タイトル画像見てもらうとよくわかりますよね。
あれこそがルミナリエの目玉とかシンボルみたいなものだと思います。
震災から時も経ったので、今の時代に見に行く人がそれを知っているかはわかりません。
自分も関東の人なので最初は知りませんでした。
ですが本来の意味を知った上で改めて見ると「わー、きれーい」以外の気持ちが出ますよね。
残念ながらここ3年はルミナリエは中止となっているようです。
そのかわりのイベントを毎年何かやっているみたいですね。
来年こそは復活したらいいなと…神戸やこのあたりの人は思っていらっしゃるのではないでしょうか。
タイミング悪くうんこしたくなる男

さて。ここからが本題。
当日のお話を振り返って書いていきます。
あれは今から11年前…ちょうど東日本大震災のあった2011年のことでした。
あの年の関東は震災そのものもそうですけど、計画停電やら何やらで全体的に暗かったです。
電車も車内の照明を落としたり、コンビニも看板の電気つけなかったり。
原発も吹っ飛んで放射能汚染の心配だの線量がどうだのみたいな話ばかりが聞こえてくる毎日。
そういうときに関西に遊びに来ると…街中が震災前と何も変わらない。
京都でさえ明るくまぶしかった。みんな元気で活力もあって。
そんな年の暮れにまた関西に遊びに来ることになりました。
彼女(今は妻)が関西の人なので、お互いによく行き来してたんです。
で、今年はルミナリエを見に行こうと。
そう誘ってくれて、その日はけっこう早い時間にもう神戸にいました。昼間ですね。
三宮から元町とか大丸のほうまで歩いたりしてあちこち見て回ったんですが…
だいたい行動し尽くして行くところがなくなっちゃったんですよね。
その日の17時から食事の予約をしてあるとは聞いてたので、時間を考えるとそう遠くにも行けず。
ずっと歩いて足も疲れてきてたので、まだ開いてないだろうけど店に行こうと。
開いてなきゃないで店の前で待たせてもらおうという話になってレストランに移動しました。
彼女が予約してくれてたのはルミナリエの起点になる旧居留地の三井住友銀行の隣のビル、
そこにあるクリスマス要素ゼロのバリっぽいアジアンな内装のお店。料理もアジア。
自分はそっち系のエスニックな料理が大好きなのですごくうれしいチョイスです。
店の中に水が流れてて石彫りのカエルが置いてあって緑もわーっとあるような。
バリアンかと思いましたよね。もしやパセラグループなのか?って。
調べてみる限りだと今この店は存在していないっぽくてちょっと残念。
で、ここに16時45分ぐらいに着いちゃったわけで。開店15分前ですね。
やっぱり「ちょっと待っててくださいね」と言われたので時間まで待ちまして。
そんで開店と同時に入店したんです。その日最初のお客さん。店内スタッフ以外誰もいない。
席に着いて料理とドリンクを注文して…自分はトイレに行きました。
足も疲れてましたけど、早くうんこもしたかったんですよ。そのとき。
レストラン早めに入れたらいいなってのは便意のせいでもあったわけです。
で、まぁ…トイレ入ってうんこして。
汚い話ばかりで申し訳ないのですが、キレの悪い便意ってありますよね。
すぐには出ないけど出し切ってなくてパンツもズボンも上げられない的な。
あとね、ウォシュレット使うともう出し終わったって思ってても刺激されてまた出るんですよ。
だからうんこタイムが終わらない。
そのうちトイレのドアをドンドンって叩く音がしまして。
「あー、お客さん増えてきたんだな」と…やっぱり皆さん食事前にトイレ行きたいんでしょうね。
その店そこそこ席数あるのにトイレが洋式便器1つしかないのが致命的にまずいところでして、
自分が出ないとトイレずっと空かないんですよ。
で、またドンドンとドアを叩く音。
待ってる人の便意も切羽詰まってるのが音だけで伝わります。こっわ。
出し終わってトイレを出たら2人待ってまして。すごい睨まれましたね。
あーこわいこわいと思いながら席に戻ったらオーダーしたドリンクが来てました。
彼女にも話したんですよ。うんこ長引いて便所出たら待ってた人にめっちゃ睨まれたって。
ちょうどそのとき、後ろからレストランのスタッフに声をかけられました。
「あのー、すみません…」って。
自分はドキッとしました。
これはさっき便所の前で並んでた人たちに「あいつが便所から出てこないせいで…」みたいに、
きっと何かお叱りを受けるに違いないと。流れ的にそうだろうと。
何かクレームを頂戴する心構えでお返事をしたところ、スタッフが言うんです。
「今日この後のルミナリエをお二人でつけてもらえませんか?」
…えっ?
その者、王蟲の怒りを鎮めバルスを唱え…られないわ
あまりに想定外のことを言われて返す言葉がすぐには出てきませんでした。
なにせ自分としては「お前のうんこタイムが長すぎる」というクレームが来る心構え。
それが今日のルミナリエをこれからつけてくれと。
どういう風の吹き回しなのかさっぱりわからなかったのですが…
とりあえず「あっ、は、はい」って、そんな感じでしどろもどろにOKを出しました。
彼女にもすぐ聞きましたよ。こんなサプライズ用意してたの?って。
「いや、知らん」って言うからもう余計に謎。
とりあえずスタッフに案内されるがままに外のテラス席の最も角に連れて行かれることに。
そこから見下ろすと三井住友銀行の前がすぐ下に見える位置。
ルミナリエの点灯する瞬間を見るには絶好のポジション。
実は最初に入店して席に通されたときから、そこで誰かが何かしてるのは視界に入ってました。
なんかキャップ被ってジャンパー着た人が数人…機械と配線をいじりながら無線で話す姿。
何かの業者かなと思ってましたが、そのときは特に気にも留めず。
それよりも便意のほうが一大事だったので。
で、その人らのところに連れて行かれて「今日はよろしくお願いします」って業者さんから挨拶。
「今から○○分後になりましたらまたお呼びしますんで、そしたら二人でボタンを押してください」
そう指さした先に…でっかくて赤いボタンがひとつ。
戦隊モノの悪の組織がヒーローにやられた最期に押す秘密基地の自爆スイッチみたいな、
なんかそんなわざとらしいぐらいにここ押してねってアピールされたボタン。
…これ押したらマジでルミナリエつくのか。この自爆スイッチで?
という思いのまま席に一旦戻るとオーダーした料理がもうありました。ちょっと冷めてたな。
料理も食べて少し経った頃に改めて呼び出しがかかり、スイッチの場所まで移動。
業者の人が無線でどこかと話しながら「あと何分です」とこっちにも指示を出します。
下に見える通りにはびっしりと大量の人々。ルミナリエの点灯する瞬間を待っています。
タイミングが近づいたそのとき、通り含めて周囲の電気が全部消えました。
一瞬全てが真っ暗になったのですが、これから始まる点灯の瞬間を動画に収めようと、
下にいた人々が一斉にケータイをつけてスタンバイしまして。
真っ暗な中で前のほうからさーっと通り全体に広がる青白い光の点。
自分の目にはそれがナウシカの王蟲にしか見えませんでした。
ナウシカが身体を張って王蟲の怒りを鎮め、赤い目が順々に青くなっていくあのシーン。
そこに金色の野はありませんでしたし服も青くありませんでしたが、風の谷は守られたのです。
「何考えてるんだ俺は」と思っても…一度そう見えたらもうそれにしか見えないんですよね。
もう自分の頭の中はジブリでした。
そんな自分をよそに流れるアナウンスと音楽、そして歌。
ちょうどその年のやつ見つけたんで載せます。まさにこれでした。
この年に東日本大震災とその後の異常な生活を経験したばかりで、
壊滅した町や悲しいニュースをテレビや知り合いから見聞きすることも多かったです。
なのでこの歌が流れてきたときは正直言って心にグッと来るものがありましたよ。
ですがさっきの怒りが鎮まる王蟲を見てしまったのがいけませんでした。
この尊く聖なる響きとともにラピュタのクライマックスシーンが浮かぶんです。
ムスカから3分時間をもらったシータとパズーが「あの言葉を教えて」などと会話を交わして、
飛行石を持った手を重ね武器を捨ててムスカに返答するあのシーン。
あのとき『君を乗せて』をルルルーってメロディーを歌うBGMでしたよね。
業者さんが言うあと3分ですのカウントダウンがムスカに思えてきてしまってどうしようかと。
で、自分と彼女で二人で手を合わせてスイッチを押しに行くわけです。
これ…押す瞬間にバルスって言いたくなるじゃないですか。
だって押そうとしてるボタンも自爆スイッチみたいだし、余計バルス言いたくなるじゃん。
でもバルスって言ったらラピュタの底壊れて宇宙に飛んでっちゃうんですよ。
震災復興を願うルミナリエの点灯でバルスなんて不謹慎極まりないわけで、
ましてや2011年。東日本大震災の年。完璧にアウトです。
点灯30秒前から秒単位でカウントダウンが始まり、そしてスイッチを二人で押す。
先ほどの動画のようにルミナリエは眩しく神々しくきらびやかに光が灯りました。
とても感動しました。本当にきれいで。
自分たちの手でルミナリエを点灯させたと思うと感慨深いものがありました。
でもバルスとは言わなかったです。言えなかったです。
大役を果たした後、記念品として関西ウォーカーの限定版みたいなものをもらいました。
表紙は桜 稲垣早希。時代を感じます。
なんでこうなったのか推測してみた
改めて彼女に確認を取りましたが、本当にサプライズを用意していなかったとのこと。
我々二人とも寝耳に水の奇跡が転がり込んできたわけです。
では…なんで我々だったのか。
調べてみると、その年はルミナリエの点灯権を開催期間中ほぼ毎日1組2名様だけ得られたようで、
それは当然ながら抽選で決めていることが書いてあるサイトを見つけました。
確か公式サイトだったのかな、あれは。
それを見る限りどの日も十数万の応募があり、その中から超幸運なペアが1組選ばれるようでした。
十数万分の1組2名ですよ。ものすごい確率です。
でもこれにも応募していないとのこと。
これは推測なのですが、本当は誰か抽選できちんと選ばれた人がいたんだと思うんですよ。
でもその人らに何かがあった。
体調悪くしたとか、別れちゃったとか。なんかそういうアクシデント。
それが理由でその日たまたま空きが出てしまったんだろうなと。
その日に点灯スイッチのあるレストランに、たまたま最初に来た客が自分らだったと。
「とりあえずこいつらにやらせるか」的な感じで決まったんじゃないのかな…って。
なんか…他に説明がつかないんですよね。
とりあえず偶然にも幸運を得てルミナリエを点灯させることができました。
大変貴重な経験でした。今でもいい思い出です。
関係者の方々本当にありがとうございました。
ちなみに点灯スイッチを置く場所は特定されないように毎年変えるようです。
来年もし開催することになっても、そのビルにはスイッチたぶんないですよ。